識者の多くが降格候補に挙げた大分トリニータがいまだ上位にいるわけ (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 前述したように、川崎ほどの技術レベルにない大分が、手段と目的をはき違え、ボールを保持することだけにこだわれば、これほどの成績は残せなかったに違いない。目指すサッカーのベースにポゼッションがあるものの、身の丈を理解したうえで、それを効果的に活用しているからこそ、大分はシーズンのおよそ3分の2が終わった現在でも、大きく順位を落とすことがないのだろう。

 再三の好セーブで奮闘したGK高木は、古巣・川崎の攻撃について、「自分たちが、守備でこれだけ動かされることは(J1でも)そんなにない。守備ブロックを作って、(選手同士の)間隔を狭めても、(川崎は)縦パスを入れてくる。普通のチーム(と対戦したとき)の倍以上は疲れる」と、その精度に高さに脱帽する一方で、充実した笑みを浮かべ、こうも語っている。

「この相手を基準に、どれだけレベルアップできるか。相手を見習って、自分たちがどうしなければいけないのかを考えたい」

 結果だけを見れば、昨季のJ1王者に完敗である。開幕当初の勢いも明らかに失われた。大分の前には、J1の壁が立ちはだかり始めた。そんなふうにも見える。

 だが、大分は目先の勝敗だけにこだわるのではなく、かといって、結果度外視で理想ばかりを求めるのでもない。6シーズンぶりのJ1で、結果と内容のバランスをうまく取りながら、成長を続けている。

 川崎戦も、いわば絶好のレッスン。充実のシーズンは、今なお進行中である。

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