FC東京の小川諒也は今が旬。強気のドリブルで日本代表へ突き進め (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 この時を含め、小川はこの清水戦でエウシーニョにドリブルから1対1を少なくとも3度挑み、3度とも勝利している。
 
 2度目は後半26分だった。最終ラインの森重真人から縦パスを受けるや、背後にピタリと張り付いたエウシーニョを、ピッチの最深部まで引き連れていき、最後は股抜きを敢行。コーナーキックをゲットしている。

 またその5分後には、これまた股抜きから左足シュートに持ち込み、清水のGK西部洋平を慌てさせた。

 小川の出場機会が増えたのは昨季の途中から。それまでは元日本代表、太田宏介(名古屋グランパス)のサブに甘んじていた。太田の魅力はキックで、その正確性を生命線にする左SBだった。相手DF00とは距離を置きながらプレーしたが、小川は接近戦を得意にする。狭いエリアで相手の逆を突く鋭いステップワークがある。目の前に障害物が構えていても、堂々と自信満々に前進する。

 キック力も備えている。正確なコントロールを武器にした太田に対し、小川の左足キックはパンチ力が魅力だ。

 身長は182㎝。日本のSBとしては大型に属するが、それでいて粗野ではない。周囲とのコンビネーションもいい。

 右SBを務める日本代表の室屋と比較すると特性の違いが見えてくる。室屋は直進性に優れた槍。まさに韋駄天だ。最大の武器はスピードで、将棋の駒で言えば香車に値する。周囲とあまり絡まずに単独で前進しようとする。

 小川は周囲と絡もうとする。いわば中盤的SBだ。SBはピッチを後ろから見ればサイド(両端)に見えるが、正面スタンド及びバックスタンドからは端に見えない。基本ポジションが、守備的MFと同じ高さまで上昇した現代サッカーにおいては、ピッチの中央部に位置しているように見える。

 周囲と絡みながら前進する。だからといってスピード、推進力が低いわけではない。総合的なバランスに優れた今日的な左SBと言っていい。

 清水の左SB松原后も期待の若手だ。小川とは同い年で、身長も同じ。以前に「日本代表にいつ選ばれてもおかしくない選手だ」と記したことがあるが、現在の両者を比較すれば、成績のよいチームでプレーしている分、小川が勝っている。小川はいい流れに乗っている今が旬の左SBだ。

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