トーレスも業を煮やして中盤へ。鳥栖の状況は昨季以上に深刻だ

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 決して、一方的にやられたわけではない。先制されながらも、すぐさま追いつく反発力も示している。だからといって、勝てる可能性があったかと問われれば、首を縦に振ることはできない。

 スコアは1−2。僅差ではあったが、鹿島アントラーズとの実力差は、やはり大きかった。7月20日、カシマサッカースタジアムに乗り込んだサガン鳥栖は、試合巧者の前に屈し、最下位から脱することはできなかった。

前線までボールが出てこず不満顔のフェルナンド・トーレス前線までボールが出てこず不満顔のフェルナンド・トーレス 立ち上がりから目についたのは、攻守の切り替えや球際の攻防といったインテンシティの差だった。ボールを奪えば一気に切り替えて前に飛び出していく鹿島に対し、失った側の鳥栖はその推進力に後手を踏み、後ろ向きの対応を強いられてしまう。中盤と最終ラインの間のスペースに相手の侵入をあっさりと許し、フリーの状態でシュートを打たれてしまっていた。

 12分の伊藤翔の強烈な一撃はポストに助けられ、15分のレアンドロのシュートは高丘陽平の好セーブで難を逃れている。しかし19分、レアンドロのドリブルに中盤が置き去りにされると、カバーに入ったCBの高橋祐治がエリア内で倒し、PKを献上。これをあっさりと決められて、早い段階でビハインドを負った。

「鹿島さんに先制点を獲られると難しい展開になるのはわかっていたので、なるべく0−0の状況を長くして、そういったなかでチャンスをうかがうプランだった」

 金明輝監督が思い描いていたゲームプランは、早々に破綻した。

 それでも、その後は鳥栖の時間帯もあった。左サイドでうまく連動し、相手の対応を巧みにはがしていく。古巣相手に決めた金崎夢生の同点弾も(副審はオフサイドのフラッグを上げていたが)、左サイドが起点となって生まれている。

 もっとも、やはり変わらなかったのはプレー強度のギャップである。躊躇なく前に飛び出す鹿島の攻撃に、どうしても後れをとってしまう。

「攻撃で人数をかけるところだったり、相手の嫌なところに進入していくところでは、前回の試合より出せたかなと思います」

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