首位FC東京のお尻に火がついた。「脇役」たちが証明した川崎の強さ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 だが、川崎のプレッシングはいつにも増して厳しく、FC東京はその出鼻をくじかれる形になった。通常との違いは、家長に代わり、右のサイドハーフ(SH)として先発起用された阿部浩之に見て取れた。

 家長は半分、フリーポジションのように動く。逆サイドまで進出することさえしばしばある。その時、攻守が入れ替われば、右SHのポジションは空いている。相手の左サイドバック(SB)にプレスはかかりにくい。それは「奪われることを想定しながら攻めていない」という状態を意味するが、阿部が出場すると、そうした危うさは一気に解消された。華には欠けるが、チームは締まって見えた。

 マイボール時の中盤の展開についても似たようなことが言えた。川崎は通常なら大島がゲームをコントロールする。すべてが大島経由で始まるといっても過言ではないが、代役として出場した下田のプレーはもっとシンプルで、川崎の展開はいつにも増して素早かった。

 プレスの掛かりも鋭ければ、展開も早い。FC東京の焦りを伴う反撃は、その餌食になった。

 後半8分に奪われた2点目では、FC東京の左SH、ナ・サンホが捕まった。スローインのボールを胸で受けたものの、圧力を掛けられ奪われると、ボールは下田の足もとに収まった。大島の代役はここで即、左足で縦にくさびのパスを鋭く入れた。ボールを受けた小林悠と中村憲剛がパス交換をすると、FC東京の守備は脆くも崩れ、最後は齋藤学が中央で詰めて追加点とした。

 川崎は6月1日の浦和レッズ戦以降、両SBに左利きを2人(左・登里亨平、右・車屋紳太郎)置いている。右SBに左利きを置くのは、世にも希な作戦だとは以前にも述べたが、この試合では、彼ら2人の左右を入れ替えて臨んだ。FC東京の右SH東慶悟には車屋を、左SHナ・サンホには登里を対峙させた。東が中盤的であるのに対し、ナ・サンホは典型的なサイドアタッカーだ。登里は車屋に代わり、その縦への攻撃にフタをする役割を課せられた。

 172cmのナに、168cmの登里を充てるこの作戦が的中したことも、川崎の勝因として挙げたくなる。久保建英がチームを去って以来、その代役として活躍してきた韓国代表の22歳は、登里のマークを嫌ったのだろう。内で構えることが多く、逆に川崎にサイドを制せられてしまったのだ。つまり、FC東京の実際の布陣は、従来の中盤フラット型4-4-2というより、限りなく4-2-2-2に近い布陣になった。これでパスをつなぎながら前進しようとすれば、奪われる位置は真ん中付近になる。まさにプレスの餌食になりやすい布陣なのだ。

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