それでもイニエスタはあきらめない。神戸、力負けで15位に転落 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 イニエスタはその直後にも、敵陣で山口蛍から横パスを受けると、相手をわざと食らいつかせ、ディフェンスにとってブラインドになるように仕向けながら、ラインの裏に走る味方を自動追尾するようなロングパスを右足から"発射"。ボックス内に入った古橋がこれを左足ダイレクトボレーで合わせ、バーを叩いている。

 勝ち続けてきた選手の実力を高らかに示していた。

「イニエスタはボールが足から離れていない。離れているように見えても、離れていないというか......。でも、自分たちはとにかく前からしつこく行こうと決めていました」(湘南・梅崎司)

 だが、試合が進むにつれ、湘南がイニエスタ擁する神戸を凌駕するようになる。攻守一体で挑む曺貴裁監督の8年目。積み上げてきた形を持っている。前から潰し、スペースに走ってボールを呼び込む。組織としては付け焼き刃の神戸を、完全に押し込んだ。

「ゲームプラン以上に、(今まで培ってきた)選手の自信が引き出されたと思います。(だからハーフタイムも)同じことをやれと言いました。相手は、足が止まってくると」(湘南・曺監督)

 後半に入って、イニエスタの"魔力"は徐々に弱まる。神戸は明らかにパワーダウン。湘南の全員守備、全員攻撃に劣勢に回った。

 69分、神戸は左サイドを完全に破られ、折り返しを中央で叩き込まれる。同点にされたあとは、組織としての未成熟さが選手個人にのしかかる。74分にはボックスで簡単な処理を誤り、混戦からミドルを打ち込まれ、逆転を許す。体力的問題か、ミスが続き、押し返せない。そして79分には、自陣内で与えたFKを頭で合わせられ、とどめを刺された。

 イニエスタは最後までピッチに立って、力を尽くしている。しかし90分を戦うなかで生まれたチーム差を解消できなかった。シュート本数は18対8。力負けだ。

「いい形で先制し、2度、PKの疑いのあるシーンがあった。そのひとつでも決められていたら......。(カウンターをフイにし)チャンスの使い方もよくなかった。ディフェンスも、もっと組織で守れるようにしないと」(神戸/トルステン・フィンク監督)

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