久保建英の穴は8割方埋まった。
FC東京優勝へのカギを握るナ・サンホ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 ナ・サンホはそうした流れのなかにあっては、古典的な選手に見える。言い方を変えれば、逆に新鮮に見える。

 前半37分、ナ・サンホは左サイドからクロスボールを送り、ニアサイドに走り込んだ永井にヘディング弾をもたらすアシストプレーヤーとして再度輝いた。キックは右足。中の様子を十分にうかがいながらボールを操作する姿は、右利きの選手のような身のこなしだった。左サイドに構えながら右足に持ち代えて、コントロールの効いた右足キックを中央に蹴り込む姿もまた新鮮だった。

 左利きを誇示するように、左足キックに持ち込もうとするのが、かつての左利きの典型的なプレースタイルだった。左でプレーしたロッベンやギグスは、絶対に右足では蹴ろうとしなかった。本田も日本代表で何度か右でプレーしたことがあるが、切り返して右足キックに及んだというシーンはほとんど記憶にない。

 次戦の相手、川崎は、ナ・サンホが対峙する右SBに車屋紳太郎を置いている。左利きの右SBの貴重さについては、以前にも触れたことがある。FC東京の左サイド(川崎の右サイド)で、いまどき珍しい左利きがマッチアップすることになる。そこでどんな絵が描かれるか。化学反応が起きるのか。

 ナ・サンホ対車屋。このサイドの攻防が、今季のJリーグの行方を占う上位対決の大きな見どころのひとつになることは間違いない。

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