Jクラブとの連携で躍進。
日体大柏は千葉の2強を倒して歴史を変えた

  • 吉田太郎●取材・文 text by Yoshida Taro
  • photo by Yoshida Taro

 だが、壁をすぐに乗り越えられたわけではない。千葉県の準決勝までは勝ち上がるものの、昨夏は市立船橋、一昨年は夏秋ともに流経大柏に敗れるなど、2強の壁を突破することができなかった。じつは過去のJクラブと高体連の提携による成功例は、個人の育成などわずかだ。16年に柏から派遣され、17年からは監督を務める、元日本代表MFの酒井直樹氏は「準決勝止まりだと、どこかに疑問が出てブレちゃってもおかしくない。でも、(日体大柏は)ブレずに任せてくれていた」と語り、片野総監督も「学校も今年人工芝を新しくしたり理解してくれていましたし、何とか恩返ししたい」と考えていた。

酒井直樹監督(写真右)と日体大柏の選手たち酒井直樹監督(写真右)と日体大柏の選手たち

 今年4月の関東大会予選で初戦敗退を喫した日体大柏は、連日選手間ミーティングを行ない、守備面などの細部にこだわってきた。酒井監督も、レイソル流の良さを残しつつ、2強に"勝つための武器"として5バックの守備的戦術と高速カウンター、ロングスローも準備してインターハイ予選に挑戦。千葉県を勝ち抜くために意識、戦い方も変えながら成長してきたチームが、歴史を変えた。

 今年のインターハイ(7月26日スタート/沖縄県)はFW西川潤(桐光学園高校、セレッソ大阪内定)をはじめ、FW染野唯月(尚志高校、鹿島アントラーズ内定)、MF武田英寿(青森山田高校、浦和レッズ内定)といった逸材が参加する注目の大会になっている。その中で日体大柏は話題校として全国に臨む。流経大柏戦で大活躍した快足FW耕野祥護や、期待の2年生FW小林智輝がケガで欠場となったことは残念だが、CB伊藤夕真主将や流経大柏戦でいずれも2得点を挙げたFW長崎陸とMF佐藤大斗、司令塔のMF堤祐貴ら全員でその穴を埋める。

 酒井監督に2強に近づいた感覚について問うと、「まったくないです。むしろチャレンジャーだと思って上を目指さないと。千葉はレベルが高いので、確固たる自信も持っていないといけない」と返ってきた。そして、秋の高校選手権予選や今後、両校に再び勝つために、これまで以上に高いレベルのトレーニングを提供すること、アップデートすることの必要性を口にしていた。

 インターハイで勝ち上がり、市立船橋と流経大柏が何度も経験している全国準決勝や決勝の舞台を踏めば、大きな成長と自信をつかむことができる。簡単なノルマではないが、「市立船橋と流経大柏を倒したというプライドもある」(長崎)、「2強だけじゃない」(伊藤)、「優勝します」(堤)と思いを持つ選手たちは本気で挑戦して結果を残し、2強に少しでも近づくつもりだ。

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