2019.07.05

名波浩監督の辞任に思う。クラブ間の資金力格差と長期政権の難しさ

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 Jリーグに限らず、各国リーグには、大きく分けて4つのグループがある。「残留を目指すエレベータークラブ」「中位」「トップ5圏内」、そして「優勝やトップ3を狙うクラブ」だ。本拠地のある地域の人口や商圏の広さなどもクラブの運営に大きく関わってくる。このヒエラルキーのなかで、いまの自分たちがどこの立ち位置なのかを見極めて、そのうえで強化や戦力補強、育成を進めていかなくてはいけない。

 ヴィッセル神戸や名古屋グランパス、浦和レッズのように豊富な資金力を持つクラブであれば別だが、そうした資金力のないクラブは、Jリーグで上位争いを毎年続けるのは難しい時代になってきていると言える。あるいは、川崎や鹿島のようにタイトルを獲り続けて、ここ数年で一気に増えた優勝賞金を強化費にするクラブにならなくてはいけないだろう。

 名波監督は就任から6シーズン目で退任したが、Jリーグでは西野朗監督がガンバ大阪で9シーズン(2002年~2010年)、湘南を2012年から率いる曺貴裁(チョウ・キジェ)監督が今季で8シーズン目を迎えている。世界を見渡せば1986年から2013年までマンチェスター・ユナイテッドを率いたアレックス・ファーガソン氏の27年や、1996年から2018年までアーセナルを率いたアーセン・ベンゲル氏の22年のケースなどあるが、これは異例中の異例だ。

 国内外にかかわらず最近の傾向として、監督は3シーズンくらいで交代するケースが目立つ。代表例はジョゼップ・グアルディオラ監督だ。2008-09シーズンから4シーズンバルセロナを率い、1シーズンの休息を挟んでバイエルンの監督に就任。ここを3シーズンで去ると、2016-17シーズンからはマンチェスター・シティを率いている。どのチームでも長期政権を確立できる実績を残してきた名将であっても、1チームでの指揮期間は3、4年ほど。この理由のひとつには、欧州トップクラブの監督業の心身への負荷が、我々が想像できないほど大きいことがあると思う。もちろん、マンネリ化による求心力の低下という側面もあるだろう。

 監督の仕事の主たるものは、選手を掌握することにある。ただ、選手というものは長く同じ監督のもとにいると、その存在や言葉に慣れてしまうものだ。ファーガソン監督やベンゲル監督のようなケースは稀で、どんな名将であっても、チームに刺激を与えられなくなっていくものだ。そうした面での苦労は、指揮官になって6シーズン目の名波監督にもあったはずだ。

 名波監督は非常に魅力的な人間性を持ち、発信力もある。長く在籍したジュビロ磐田のカラーが強いものの、セレッソ大阪や東京ヴェルディでのプレー経験もあり、海外リーグでプレーした実績もある。今後、招へいを考えるクラブも多いはずだ。

 彼は、オファーがあっても彼の心を揺さぶるようなモチベーションを持てなければ、簡単には首を縦に振らないだろう。ただ、名波監督は意気に感じれば動く人柄なだけに、そうした心意気で彼を口説き落とすクラブが現れて、ふたたび指揮官となる姿を見たいと思う。

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