横浜FMが暫定2位に浮上。
「攻撃は最大の防御」の着地点を発見か

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「堅牢さ」――それは1995、2003、2004年に、横浜F・マリノスがJリーグの王座に就いたときの代名詞だった。堅い守備で相手を跳ね返す。その安定感が攻撃を回していた。GK川口能活、DF井原正巳、小村徳男、松田直樹、中澤佑二らは、日本代表でも守りの中心だった。2004年のJリーグ制覇以来、最も王位に近づき、天皇杯を獲得した2013年のチームも、難攻不落を誇っていた。

 ソリッドな戦い方は、横浜FMの伝統と言える。

 しかし、2018年にアンジェ・ポステコグルーが監督に就任すると、横浜FMはエキセントリックな攻撃サッカーを信奉するようになった。昨年は連勝後に連敗を繰り返し、不安定な戦いぶりだった。能動的に攻め続けるも、その裏を取られる形で、失点を増やした。

 だが今シーズンは、その着地点を見つけつつある。最多得点を誇りつつ、強力な攻撃が守備を旋回させているのだ。

「パスの本数は意識しています。(パスを素早く回すことで)相手を攪乱できる、というのは選手も実感している」

 横浜FMの下部組織で育った19歳のMF、山田康太の言葉だ。新たな発想の戦いは、チームの新時代の代名詞になるのか――。

松本山雅戦で決勝ゴールを決め、喜ぶエガジル・ジュニオと横浜F・マリノスの選手たち松本山雅戦で決勝ゴールを決め、喜ぶエガジル・ジュニオと横浜F・マリノスの選手たち 6月22日、日産スタジアム。4位の横浜FMは14位の松本山雅を迎え、正念場となる試合を戦っている。勝てば首位争いに踏みとどまるが、負ければ一歩後退する。前半の折り返し前、覇権を得るには負けられない一戦だった。

「7対3、もしくは8対2でボールをつなげられても、引き込んでのハーフコートゲームはやりたくなかった。相手の(ボールを回す)ストロングはウィークにもなる。それに見合う選手を選び、準備してきた」(松本・反町康治監督)

 横浜FMは序盤、中盤の中央を厚くした松本の守備に手こずった。同時に、高いラインの裏を狙われる。セットプレーも要注意だった。

 もっとも、プレッシングを抜け出し、高い位置でボールを受けると、相手を易々と押し込んでいる。サイドバックがプレーメーカーのような位置を取って、攻撃の起点になった。サイドから中へ人を引き連れることによって、スペースを創り出す。その空間を連動して使う選手がいて、チームのオートマチズムがあった。

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