2019.06.15

川崎の抱えるジレンマ。
3連覇を狙う王者の前に新たなハードル

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 もうひとつの課題は、試合中に隙を与える時間があることだ。

 札幌戦ではPKを与えた少し前の時間帯から、ボールを失う機会が増えていた。とりわけ目立ったのは、奪ってからの1本目のパスが再び相手に渡ってしまったこと。

「取られ方が悪くなって、後手を踏むような展開になった。あそこでうまくコントロールできなかったですし、自分たちのミスもあって、相手の時間が長くなってしまった」(谷口)

 引き分けに終わった第6節のセレッソ大阪戦でも、ディフェンスラインと中盤が間延びした時間帯に、そのスペースに柿谷曜一朗の侵入を許して先制点を奪われている。もちろん90分間、集中力を保ち続けることは難しく、相手の流れになる時間帯も当然ある。しかし、そこで耐え切れない淡白さが、今季の川崎には見られるのだ。

 そして、いまだ陣容の最適解を見つけられていないことも、問題のひとつだろう。

 今季の川崎は、ACLとの両立に耐えうるだけのタレントを確保した。一方で、昨季までは出番が少なかった長谷川竜也をはじめ、2年目の脇坂泰斗、20歳の田中碧ら若手が台頭。新加入のブラジル人トリオもフィットするなかで、昨季までのレギュラーだった中村憲剛や阿部浩之らが出場機会を減らしている。

 豊富な戦力を備えている状況は、指揮官とすればうれしい悩みだが、阿吽の呼吸で成り立つ川崎のサッカーは成熟した連係が求められる。メンバーの入れ替えが若手の台頭を促したのは確かだが、他方で精密機械のような組織の歯車が噛み合わなくなる危険性もある。そこが鬼木達監督にとって、最大のジレンマだろう。

 一方で、ACLに敗れて今後はリーグ戦一本となるなか、メンバーを固定化すれば、いわば余剰戦力が生まれてくる。そうなれば、チーム内に不満分子が生まれてくることも考えられるだろう。

 一昨季は勢いで頂点に駆け上がり、昨季は継続性と成功体験のもとで連覇を成し遂げた。そして今、3連覇を目指す川崎の前には、新たなハードルが立ちふさがっている。それを乗り越えるには、指揮官のマネジメント能力が最大のカギとなる。

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