無名→川崎でポジション奪取。知念慶「技術を買われた選手じゃない」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

―― やはり3年目の今季は、自分のなかでもこれまでとは違う手応えがあるんですね。

知念 だからこそ、"慣れ"と言ったんです。実は、フロンターレに加入する前にもスカウトの(向島)建さんから、「慣れは大きいからな」と言われていました。実際、プロ1年目の時はプロのリズムに慣れることができなくて、ずっとしんどかったんです。

 学生の頃と何が変わったのかと聞かれれば、やっぱりフロンターレは選手全員、技術が高い。自分自身は技術を買われて加入した選手ではないので、そこの差を一番感じましたし、苦しみました。差を感じているのは、今もなんですけどね(苦笑)。

―― フロンターレといえば、中村憲剛選手や大島僚太選手を筆頭に、技術の高い選手が多く在籍しています。そのなかで、「自分の特徴は技術ではない」という自覚はあった?

知念 自己分析はできるほうだと思っているので、そこじゃないことはわかっていました。だからこそ、苦しかったんです。

 1年目は外から試合を眺めることが多くて、そういう経験自体も今までにない光景だった。おまけに、ピッチを見ればチームメイトが躍動していて、楽しそうにサッカーをしている。その姿を見れば見るほど、「自分はこのピッチに立つことができるのだろうか」という不安を感じていたんです。

―― 時には自暴自棄になりそうになったことも?

知念 とくに昨シーズンの序盤は、考えすぎてしまったところがありましたね。(小林)悠さんがケガしたことで出場のチャンスをもらったんですけど、なかなか結果を出せず、周りからもいろんなことを言われて......。それでどうしたらいいかわからなくなって、考えすぎてしまったんです。でもその後、スタメンを外されてからは気持ちが楽になって、「また新たにがんばろう」と思えるようになりました。

―― 試合に出たいという気持ちがありながらも、試合に出られなくなったことでリセットできた、というのはちょっと不思議な気もしますね。

知念 それくらい、先発で起用されていた時は鬼木(達)監督からもチームメイトからも要求されることが多くて、どうすればいいのか整理できなくなってしまっていたんです。でも一度、外から試合を見ることで、自分自身がやらなければいけないことが見えてきて。その甲斐があって、夏くらいからは前向きに取り組めるようになりました。

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