久保建英の周辺は風雲急。2ゴール大分戦がJリーグラストゲームか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 そして後半アディショナルタイム、久保はメンタル面でも違いを見せる。スローインを受けた相手の焦燥を見逃さなかった。キックミスをしたたかに奪って独走。飛び出していたGKも軽々とかわし、無人のゴールへ左足で蹴り込んだ。

「自分よりも走っている選手はいましたから」

 久保は試合後、自らの活躍など一顧だにしないように語ったが、その集中力と狡猾さは飛び抜けていた。

 3得点すべてに絡む活躍。勝利の祝祭のような"久保ショー"だった。首位を走るFC東京におけるエースの風格か。

「勝利して当然」

 久保の言動には、その気配が透けて見える。負けず嫌いという表現では生ぬるい。勝者のメンタリティというのだろうか。そのパーソナリティは、確信に満ちたプレーに濃厚に出ている。

「敗戦で、今に活きていることなど何もない」

 それが久保の信条だと言われる。筆者はかつて18歳だったリオネル・メッシにインタビューしたことがあるが、まさに同じような話を聞いた。

「僕はどんな試合でも、すべて勝つ。そのつもりでピッチに立っている。負けることなんて少しも想像もしない。負けて学ぶことなんてないよ」

 メッシはそう言って、敗北を憎んですらいるようだった。その気概こそが、自らの技術を最大限まで高めさせたのかもしれない。完全なる勝利至上主義。「敗北を糧に」とは違う価値観である。

 その未来は、予測できない。

「久保はバルサから遠のく。(復帰の見込みは)ほぼなし」

 同じ日、スペインのエル・ムンド・デポルティボ紙は、そう伝えている。同紙はバルサと久保の"契約内定"を一早く報じていたが、その後、久保側が代理人を変更し、「1部リーグレベルの給料、バルサのトップ登録」などを求めたことで交渉は難航し、4度に渡る会議を行なったが、合意からは程遠いという。

 これによって、久保の行く先は欧州の別のクラブになるのか――。その周辺は風雲急を告げつつある。あるいは、大分戦がJリーグ最後の試合になるのかもしれないのだ。

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