「元バルサと言わないで」。鳥栖低迷脱出の原動力、クエンカの成長 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎/アフロ●写真 photo by Matsuoka Kenzaburo/AFLO

 実はクエンカのプレースタイルは、ここ数年で大きく変化している。バルサ時代は俊足のウィンガーだった。右サイドでボールを持ったら、積極的に縦へ仕掛け、ディフェンダーと1対1で勝負し、ペナルティエリアに入って決定的な仕事をする。常に危険な匂いが漂った。

「昔のビデオを見ると、イサックは"ビュンビュン系"の選手ですよね」

 鳥栖のエースであるFW豊田陽平は、そう説明する。

「でも今は、縦に仕掛けるよりも、左サイドでボールを受けて、中に入ってチャンスメイクする感じですかね。前でポイントを作れるのはデカイですよ。自分としては、まだまだパスが出るタイミングを合わせる必要はありますけど、そこはこれからですね」

 今のクエンカの主戦場は、左サイドになっている。そこでボールを持ち、横に運びながら相手の守備をずらし、プレスに来られたらターン。飛び込んでくる相手の力を利用してくるりと回る動きは、リオネル・メッシやアンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデスなど、バルサ下部組織育ちのMFたちの得意技である。

「イサックには、もっと(得点に直結する)危ないエリアでプレーするようにさせたい。そこで力を発揮できる選手だし、そのサポートをしたいですね」

 鳥栖の右サイドバックとして、チーム全体のバランスをとる小林祐三は、そう語っている。

「正直、守備は決して上手な選手ではないですね。ただ、イサックはボールが来たときにマークをはがせるし、とにかくボールを持てるから、楽にはなります。それに、前に居残ることで、カウンターの急先鋒になれる」

 抜群のコントロールで、ボールを運ぶことができる。速攻の起点となるのだ。もっとも、それ以上にエリア内で勝負を決める技量を生かしたいところか。

「(ルイス・カレーラスから金明輝に監督が交代して)最大の変化? まずシステムが変わったかな。求められていることは、いわゆるサイドハーフと変わらない。攻撃では前でキープし、ドリブルで仕掛ける。守備ではサイドバックと協力してディフェンスすることさ」

 クエンカは自らの仕事について淡々と語る。

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