2019.05.30

イングランドの「敏腕」が導く。
Jリーグの新育成プロジェクトの中身

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

「当時はプレミアリーグに多くの外国人選手が流入し、ホームグロウン(自国育成)選手のプレー機会がほとんど失われていましたので、ホームグロウン選手を育成する必要性を感じていました。そこで、育成にもっと投資をしなければならないという考えから、EPPPをプレミアリーグで発動させました。

 各クラブのアカデミーはもちろんのこと、プレミアリーグ機構もFA(イングランドサッカー協会)も、そのプランに対して多くの投資を行なうようになり、それが2017年の優勝(U-20W杯とU-17W杯)の端緒になりました」(テリー・ウェストリー)

「プロジェクトDNA」を推進するテリー・ウェストリー(左)とアダム・レイムズ(右) photo by Tanaka Wataru そのEPPPでは、さまざまな施策が実行された。たとえば、それまで18歳以下の選手のスカウティングが「自宅から90分以内の移動範囲」に制限されていたルールを撤廃したこと。また、各アカデミーを最高ランクの1から4まで格付けしたうえで、それに応じた支援金を分配する制度を導入したことも、その例として挙げられる。

 しかしながら、EPPPの成功に至るまでには、それ以前の試行錯誤の時代もあった。

「1990年代後半、FAのテクニカルダイレクターに就任したハワード・ウィルキンソンを中心に、FA主導による育成強化が進められました。しかしプロジェクトのインパクトが弱く、変革の施策も物足りないもので、結局7、8年続けてもなかなか結果が出ませんでした。

 そんななか、今度は資金力のあるプレミアリーグが主導となって、各クラブと連携しながら新しい育成改革に乗り出すことになったのです。しかし、それはFAの育成プログラムを批判するものではなく、プレミアリーグ自身の『我々がやりたい』という強い意志によって始まったものでした。幸い、当時FAの技術委員長が『各アカデミーの育成がうまくいけば、結果として代表チームの発展につながる』と理解を示したことで、FAもプレミアリーグのプロジェクトを支援することになりました。

 とはいえ、リーグ機構が育成に力を注ぐことに対しては、当然ながらFAの立場というものもあります。そこで、両者の関係性を良好に保ちながら改革を進めていくことが、当時の私の仕事でもありました」(テリー・ウェストリー)

 始まったばかりの「プロジェクトDNA」も、実は2015年から2018年にかけて施行されたJFAとJリーグの協働プログラム「JJP」の活動結果を受けてスタートしたという背景がある。今後、このプロジェクトを好循環させるためにもJFAとの連携は欠かせない。そういう意味においても、テリー・ウェストリーは「ベストパーソン」と言うべき人物だ。

 では実際に「プロジェクトDNA」はどのような未来図を描き、具体的に何を始めているのか。彼らの話は、本題の「プロジェクトDNA」に移っていく――。

(後編につづく)

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