2019.05.29

イニエスタだけではダメ。神戸「バルサ化」に足りないものは?

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 しかも、「結果を出す」「組織に哲学を植え付ける」ことを同時に遂行していくことは、サッカーに限らず、どんな仕事でも難易度が高いもの。その両面で実績を残してきた監督となると、世界を見渡しても数えるほどしかいない。

 また、バルセロナが現在のスタイルになるには、50年近い歳月を要していることを忘れてはいけない。1973年にヨハン・クライフが選手としてバルセロナに移籍してきて、その後、監督としても自らの理想とするスタイルをクラブに植え付けて結果を出した。そして、その薫陶を受けて育ち、チームの主力選手へと成長したペップが、その後バルサの監督になったことでさらに大輪の花を咲かせた。現在のバルサは、1、2年で築き上げられたものではない。

 つまり、神戸がバルサのようなクラブになるのは、一朝一夕でできることではない。ならば、イニエスタとの契約がある間に、短期的な「結果」を出しながら、同時に長期的な視野に立って「バルサ化」を推し進めることを重視すべきだろう。理想としては、結果も残せる「バルサ化」にふさわしい指揮官に長期間チームを託す必要がある。ただし、その任にうってつけのペップ・グアルディオラのような監督は世界に何人もいないはずだ。元アーセナル監督のアーセン・ヴェンゲル氏にオファーをしたという報道もあるが、神戸の監督選びは非常に難しいものにならざるを得ないだろう。

 また、神戸が目指している世界のトップクラブであるバルセロナは、監督と選手の獲得にお金を使っているだけではない。トレーニング設備、スカウト、育成組織、医療体制、広報活動など、ピッチだけではなくピッチ外のありとあらゆる分野にも多額の資金を投じ、多くの優秀なスタッフ・人材を獲得し続けている。

 それも考えると、神戸が取り組んでいる「バルサ化」が容易でないことは理解してもらえるのではないだろうか。もちろん、この「バルサ化」が成功したら、日本サッカー界にとってこれ以上ないほど魅力的であることは間違いない。新しい風を吹かそうとしている神戸が、『産みの苦しみ』を乗り越えて「バルサ化」を推進し、ビッグクラブへと成長していくことができるか、引き続き注目していきたい。

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