C大阪戦不発も適応力は驚異的。
久保建英は狂騒を力に転換できるか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 もっとも、17歳の日本代表は才能の片鱗を見せている。

 後半14分だった。久保は右サイドで相手ディフェンスのチャージを受けながら、我慢強くボールをキープ。相手を十分に引き寄せた後、背後を駆け上がった室屋に対し、タイミングを合わせるように、すくい上げるようなパスを出し、巧みにラインを破っている。結局、室屋が蹴ったクロスは味方が合わせ切れなかったが、実に玄妙さを感じさせるプレーだった。

「終盤、右サイドから崩されたシーンは極めて危険だった」

 セレッソのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督も、そう指摘している。試合終了間際、ゴールキックから長いボールを蹴り込まれると、それが裏に抜けてしまい、ディエゴ・オリヴェイラにGKとの1対1の決定機を与えたが、それ以上の脅威だったという。技術とコンビネーションを使い、堅牢にこしらえていた防衛線を一瞬で破られたからだ。

「(久保)建英が抑え込まれると、攻撃は苦しい部分がある」

 FC東京の選手がそう洩らすほど、久保は存在感を増している。

 しかし一方、久保はまだまだ経験が乏しいのも事実だ。様々な条件で、自らのプレーを適応させる。今はその場数を踏んでいる段階だ。

「建英にとっては、(このスタジアムは)初めてのはず。(それぞれの会場で)コンディションや芝生も違う。簡単にはアジャストできない」

 FC東京の長谷川健太監督は、会見の最後で、気遣うように言った。

 選手は舞台に立つ必要がる。そこで適応し、技術を改善させる。才能だけでは足りない。戦いを重ねるなかで、似たようなシチュエーションにアジャストできるようになる。そうして最善の選択肢を持ち、どこでも変わらず力を出せるようになるのだ。

 久保の場合、その適応力は神がかり的に早い。それでも、彼はまだ17歳。今は適応のプロセスにあるのだ。

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