イニエスタだけでは勝てない。神戸のルヴァン杯敗退が意味するもの (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「ファンマ(リージョ)は細かくプレーを整理してくれるから、わかりやすい」と、多くの選手が心酔していた。

 昨シーズン途中、リージョが監督に就任して以来、選手の動きは明らかに変わっていった。

 たとえば古橋亨梧は、最も成長した選手のひとりだろう。スピードや決定力は以前から注目されていたが、それを生かすための準備動作ができるようになった。その成長を目の当たりにして、山口蛍、西大伍のような日本代表クラスの選手が、今シーズンは新天地に神戸を選んでいる。彼らの他にも、日本代表レベルで神戸移籍に興味を示した選手は1人や2人ではなかった。

「ファンマのもとでプレーしていたら、必ずサッカーがうまくなる、という実感があります。指導が熱いし、なにより納得できる。今までサッカーをしてきて、初めての経験です」

 控え選手までもが、口々にそう洩らしていた。もちろん、アンドレス・イニエスタという世界最高のMFがいた事実は大きかった。練習を一緒にするだけでも、多くの刺激が周りに伝播した。

 しかしそのイニエスタがいても、今の神戸は惨憺たる有様だ。

 リージョ監督時代は、すでに過去である。後戻りはできないし、前を向くべきだろう。ルヴァンカップの名古屋戦で、なりふり構わず戦い方を変えたのは、「勝つことが正義」というなかでの苦肉の策だった。

「前を向くためには、それぞれポイントがあると思う。集中して、取り組んでいくしかないと思う」

 Jリーグ第12節の横浜F・マリノス戦後、山口は言葉を探しながら、そう吐き出していた。

 クラブも組織として、改善を試みる必要があるのだろう。さもなければ、ルヴァンカップ敗退だけでは収まらない。リーグ戦も降格圏に近づいている。勝利は勝利を連鎖させ、敗北は敗北を連鎖させる。

 5月26日、15位の神戸は本拠地に9位の湘南ベルマーレを迎え撃つ。

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