J王者川崎にも身につけてほしい、鹿島、浦和のACLにかける「熱量」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Imaginechina/AFLO

 後半23分、山本は、レオ・シルバのCKをヘッドで擦らし、ゴール前へ変化をつけて流し込んだ。そこに現れたのが伊藤翔。グループリーグ突破に前進した待望の同点ゴールには、途中交代の2人が深く関わっていた。

 逆転弾が生まれたのはその2分後だった。得点者は伊藤。逆襲からディフェンダーのスライディングタックルを利用するように放った、技ありの浮き球シュートだった。

 繰り返すが、先発は中村だった。ケガで長期戦線離脱していた選手である。安部裕葵や遠藤康の方が選択としては無難な気がしたが、12日のヴィッセル神戸戦と、18日の松本山雅戦に36分間出場しただけの選手を、大岩監督はこの大一番に先発させた。

 選択ミスと言えばそれまでかもしれない。だが、それで勝利を飾ることができれば、一転それはチームの財産になる。中村に代わって出場した伊藤も2ゴールを挙げた。結果論とも言えるが、選択肢が増え、総合力が増したことも事実なのだ。

 後半に強い鹿島。決勝トーナメントが深まるにつれ、尻上がりにチーム力を上昇させていく鹿島の真髄を見るような試合だった。鹿島ほど使える選手が多くいるチームも珍しい。

 一方、浦和レッズの最終節は、G組で2位に並ぶ北京国安とのホーム戦だった。得失差では上回るが、北京とのアウェー戦は0-0。優先されるのは当該チーム同士の結果なので、浦和が突破する条件は鹿島より厳しかった。さらにJリーグでは3連敗中。直近の湘南ベルマーレ戦でも大逆転負けを許すなど、危うさは鹿島以上に漂っていた。

 実際、相手の北京は相当強そうに見えた。キックオフした瞬間、浦和の勝利を予想した人は少なかったはずだ。なにより目を奪われたのはブラジル代表のレナト・アウグストで、この超A級選手が躍動。ラス・パルマスなどで活躍したスペイン代表歴があるホナタン・ビエラ、そしてビジャレアルで知名度を高めたセドリック・バカンブ(コンゴ代表)がそれに連動すると、浦和の劣勢は鮮明になった。

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