「イニエスタ不在」というレベルではない。漏れてきた神戸の危機的状況 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

「宮は左利きで、潜在能力が高いセンターバック。最初はポジショニングから仕込まなければならなかったが、多くのことを吸収している。成長を感じる選手のひとりだ」

 リージョはそう語っていたが、今やその賞賛は痛みすら伴う。

 先制を許したことによって、神戸は足並みが乱れていった。張りぼてのチーム構造が露わになる。ダンクレーがサイドを無理矢理に攻め上がってはカウンターを浴びるなど、なんの規律もない。それは自滅に近かった。

「(失点は)自分たちのミスから始まって......。失点すると、どうしても気持ちが落ちてしまう。前向きにならないといけないが......。なかなか攻撃で形を作れないところで、失点すると難しくなる」

 日本代表MFでもある山口蛍は、訥々(とつとつ)と言葉を紡ぐしかなかった。

 67分、神戸は右サイドの守備を完全に破られる。大崎玲央、ダンクレーが2人とも置き去りにされ、易々と中央へ折り返されて2失点目。守りの連係はないに等しかった。宮と同じく、リージョに成長を期待されていた大崎は、慣れないサイドバックで屈辱的な姿を晒した。一方、Jリーグ有数のサイドバックである西はサイドアタッカーを託されていた。ケガ人云々より、有力選手の力を適性のあるポジションで引き出せていない事実が重かった。

「ピッチにいる選手が、こんなにバラバラになるものなのかって......。こんな経験はない」

 ある選手は、状況に危機を感じながら、深刻な口調で洩らしている。

 83分、神戸はパスカットから右サイドを崩され、ファーポストに折り返されると、三好康児に左足で叩き込まれている。90分には、GKキム・スンギュが一度シュートストップしたものの、エリア内で拾われてしまい、再び三好にニアを撃ち抜かれた。万事休すだった。

「自分はどういう状況だろうと、あきらめる性格ではない」(神戸・ウェリントン)

 神戸はアディショナルタイム、ウェリントンが右サイドからのクロスに合わせ、一矢報いたが、それで精一杯だった。

「(負けた後)ブーイングはなかったと思うけど、このままでいいのか......。ブーイングされる結果と内容だったと思う。サポートはありがたいけど、自分たちに当たってくれてもいいかもしれない。ピッチに立つ選手はひとりひとり、現状を重く受け止めないと」

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