中村俊輔の言葉に共感。那須大亮は常に「攻め」の決断を下してきた (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by ZUMA Press/AFLO

 さらに言うならば、そうして選択したクラブにおいて、たとえ試合に出られない状況に追いやられても――、たとえば現在、在籍するヴィッセルのように、同じポジションに新たなライバルが次々と送り込まれてきても、那須には「試合に出られないから移籍」という考えはないと言う。

 それはかつて、中村俊輔に言われた言葉に共感しているからこそ、だ。

「いつだったか、俊輔さんがサラリと言ったんです。『(試合に)出られないという理由だけで移籍したら、結局、同じことを繰り返す。それよりもまずは、現状を変えるために何をすべきかを考えるのが先だ。そうやって我慢して、自分と向き合うことで得られるものは必ずあるぞ』と。

 その言葉がすごく腑に落ちたというか。現状と向き合わずに移籍を選ぶのは、自分にとって逃げでしかないな、と。それに、サッカーに限らず人生は常にリスクと隣り合わせじゃないですか? どれだけ『安全だ』と言われることにも必ずリスクはつきまとう。

 そう考えても......たとえ試合に出られそうなクラブを選んで移籍したところで、確実にピッチに立てる保証なんてない。それなら僕は、自分の意思で何かを選択したい。自分の意思が乗ったチャレンジなら、それがどう転ぼうと必ず自分の中でいいものにしようという"思い"が働くはずだから。

 僕にとって人生は、意思があって、思いがあって、初めて進むもの。だからこそ、そのチャレンジができなくなったら、引退を考える時だと思っています」

 話を聞いていると、とにかくその思考は明快で、ポジティブだが、そんな彼でも"引退"の文字が頭をよぎる瞬間はあると言う。

 30代に突入してからはとくに、自分をどれだけ奮い立たせても、どことなく気持ちが重く、「こんな感じで気持ちが持っていかれて、引退を決めちゃうんだろうな......」と考えた日もあるそうだ。最近も、「ああ、(現役生活が)終わっちゃうのかな〜」って思う瞬間に何度か直面しているが、今のところは「そう思って練習場を後にしても、翌朝になったら、その考えはどこかにいってしまっている」と笑う。

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