攻撃サッカーから堅守チームへ。トリニータがJ1仕様になって快進撃 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 もっとも、藤本以上に際立ったのは、その堅い守備だろう。

 クサビに対して鋭い出足を見せる2ボランチ、エリア内に侵入させない3バック、好セーブを連発した守護神の高木駿。湘南に倍近くの16本のシュートを打たれたものの、そのほとんどはエリア外からによるもので、致命的なピンチはほとんどなかった。

 これで大分は3試合連続のクリーンシートを達成。ここまで6失点は、首位のFC東京(5失点)に次ぐ少なさだ。

 攻撃サッカーで昨季のJ2を席巻した大分だったが、今季はその堅守に自信を見せている。危険な位置でボールを失わないリスク管理の徹底も、つまりは大分らしさ。J1仕様の戦い方を身につけていると言えるのではないか。

 面白いデータがある。

 大分は今季ほとんどの試合、相手よりボール支配で勝っているのだが、シュートの数で上回ったのは3試合しかない。ボールを大事にしながらも、決して無理はせず、ここぞという場面で力を注ぐ。だからこそ、安易なミスからの失点が少なく、安定した戦いを実現できているのだ。この現実的で効率のいい戦いにこそ、大分の躍進の要因を見出せる。

 この日の大分のスタメンで、J1通算100試合以上に出場しているのは、今季湘南から加入した高山薫のみ。経験値は高くなく、ビッグネームも、圧倒的な個の力を備えた外国籍選手もいない。強烈なタレントを揃えたチームが苦戦を強いられるなか、決して金銭的に恵まれていない地方の昇格チームの躍進は、痛快この上ない。

 もっとも大分には、ここから正念場が待っている。第13節から川崎フロンターレ、FC東京、名古屋グランパスと、上位陣との3連戦が組まれているのだ。

 まさに今季の試金石とも言える3つの戦いで、大分はいかなるパフォーマンスを示すのか。ここを乗り越えた時、"大分の奇跡"の序章が幕を開けるかもしれない。

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