「イニエスタを走り回らせても...」。前監督が示唆した神戸復活のカギ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images

 今の神戸にとって、イニエスタ、そしてルーカス・ポドルスキという実力者の順に(ダビド・ビジャは同じく一流選手だが、ストライカーだけにあくまでゴールに集中する必要がある)チームを作るしかない。選手ありき。その基本に回帰するしかないだろう。

「選手がいなければ、サッカーはできない。私自身、プロサッカー選手に敬意を抱いている。子供の頃から、強く憧れていたからね。今でもそれは、少しも変わっていない。選手になったからにはそれだけの能力があるわけで、それに気づいてほしいし、一心不乱にトレーニングへ向かうべきなんだ」

 リージョはそう語っていた。彼は選手に対し、厳しい言葉も投げかける。しかし、戦う姿を見せる選手を、ひとりも見捨てなかった。伊野波雅彦(現横浜FC)のような気むずかしいところのある選手をやる気にさせ、気持ちが切れかかっていたポドルスキを鮮やかに蘇らせた。戦術面の指導だけでなく、サッカーに懸ける熱さが選手を感化し、本来のプレーを取り戻させたのである。

「私は、日本人よりも日本人選手の可能性を信じている。就任当初は、はっきり言って、プレーレベルが低いな、と思う選手がいた。しかし指導をするなかで、彼らはわずかな時間で変わっていった。その成長には、心から驚かされた。感動したんだよ」

 リージョは、嬉しそうに笑っていた。

 ルヴァンカップを挟んで5連敗となった前節の北海道コンサドーレ札幌戦、神戸は敵に蹂躙されるように敗れている。その後、ルヴァンカップで大分トリニータに敗れ、6連敗中だ。

 残酷なもので、リージョの色はすでにほとんど残っていない。リージョ神戸は負ける時も、激しく撃ち合い、迫力のある攻めを見せたが、その気配もなかった。付け焼き刃の4-4-2はまったく機能せず、選手の判断に迷いが見えた。厳しい状況はケガ人を生み、プレーを乱れさせている。

 選手は道標を失っているのだろう。

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