ベガルタ仙台、J1残留へ厳しい現状。王者相手に露呈した「脆さ」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「そのあたり(重心が下がったこと)を少し整理して、背中を押して、(前へ)出ていこうとすれば、高い位置で実際にボールを取れるので、それが試合の頭からやれるようになると、また違った結果が出せたのかなと思う」

 そんな渡邉監督の言葉どおり、仙台は後半と言わず、前半途中から少しずつ重心を前へと移した。川崎がMF家長昭博、MF中村憲剛らを欠いていたとはいえ、徐々に相手の持ち味を打ち消す守備ができるようになっていった。

 しかし、冷めた言い方をすれば、勝負が決してから目を覚ましたのでは、遅いのだ。

 仙台は前節、ガンバ大阪に2-1で勝利し、今季J1での2勝目を手にしたものの、それが選手に自信を与え、積極性をもたらすことはなかった、ということになる。

 2014年シーズン途中から仙台を率い、6季目を迎えた指揮官は、「0-3から1点を返したところや、これ以上点はやらずに踏ん張ろうという選手の姿勢は次につながる」と語ったが、前向きな言葉を鵜呑みにするのは難しい。

 仙台の最近5シーズンのJ1順位は、14位、14位、12位、12位、11位。着実に順位を上げてきたとも言えるが、常にふた桁順位に低迷してきたとも言える。まして今季は、MF奥埜博亮、MF野津田岳人、DF板倉滉ら、昨季の主力を移籍によって失っている。その結果、ここまで2勝7敗1分けと大きく負けが先行。順位も前節終了時の16位から17位に下がり、ついにJ2自動降格圏に足を踏み入れた。

 仙台にポジティブな要素があったことは否定しない。長いJ1のシーズンは、まだ3分の1弱を終えただけである。

 だが、楽観的になり過ぎれば、7カ月後に待っているのは、最悪の結末である。

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