イニエスタが「バルサのようだ」と言った直後、指揮官は神戸を去った (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 しかしリージョは、人種や国籍、あるいは置かれた立場にこだわらない。選手には平等に接する。サッカーそのものがすべてなのだ。そしてサンペールを手元に置いたとき、リージョはその価値に気づいたという。

「ボールを受け、パスを味方につける。その単純な動きを、これだけのスピードと精度でできるのか」

 指揮官は正直な男である。限られた外国人選手出場枠のなかで韓国代表GKキム・スンギュを外し、5番目の外国人にサンペールを選んでいる(あとの4人はアンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャ、ルーカス・ポドルスキ、ダンクレー)。目指すべきボールゲームに近づくため、必要な人材と決断したのだ。

「セルジには、『ボールを受けたらターンするように』と、とにかくケツを叩いたんだ」

 リージョはそう振り返っている。

「とにかくうるさく言ったよ。『常にパスコースを、身体の向きを変えながら作り、フリーの選手を探し、創り出せ』とね。セルジは、それができるだけのセンスを持っていた。そしてプレーするたび、改善していった。正直、驚くほどにね。広島戦は双子筋を痛めていて、最後はかなりきつかったと思うが、よく走っていた。これから、どんどんよくなるはずだった」

 逆転されて敗れた広島戦は、リージョにとって最後の試合になっている。しかしこの時、もっともバルサに近いプレーをしていた。

「ミステル(監督)、神戸はあなたが来てから本当にいいプレーをしている。今日(広島戦)の前半は本当にすばらしかった。バルサでプレーしていた頃を思い出したよ!」

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