川崎パスサッカーの主役、家長昭博。
その「スゴさ」は両刃の剣だ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 昨季のJ1リーグ覇者、川崎フロンターレが、今季はいささか出遅れている。第6節を終了した時点で勝利はわずかに1。第7節、最下位のサガン鳥栖に勝利したことで、ようやく順位を8位まで上げた。

 第8節のホーム戦、相手は9位の湘南ベルマーレだった。湘南は、布陣こそ5バックになりやすい3バックを採用するが、選手の走力でそのデメリットを最小限に食い止めようとするサッカーだ。川崎は自らのスタイルとは対照的なこのチームに2018年、2016年のホーム戦では接戦を許し、引き分けている(2017年は湘南がJ2だったので対戦なし)。

 今年も接戦必至か。観戦に駆けつけた理由はそこにあった。しかし淡い期待は早々に消えた。川崎は湘南の並びの悪い3バック(5バック)を再三突き、前半で試合を2-0とした。

2-0で勝利した湘南ベルマーレ戦で存在感を発揮した家長昭博(川崎フロンターレ)2-0で勝利した湘南ベルマーレ戦で存在感を発揮した家長昭博(川崎フロンターレ) 存在感を際立たせたのは、昨季のJ1年間最優秀選手だった。家長昭博の左足にボールが収まると、湘南の足はピタッと止まり、その3バックは5バックに成り下がった。前節まで欠場していた大島僚太が復帰したことも輪を掛けた。試合は一方的になりかけていた。いつ川崎に3点目が生まれても不思議はない状況だった。

 ところが、その気配は後半に入ると失われていく。試合を優勢に進めたものの、惜しいチャンスを作ることができなくなった。それでも、家長は相変わらず独得の存在感を発揮した。大島とともにパスサッカーの主役として活躍した。そしてゲームをコントロールしたが、肝心のチャンスは作れずじまい。このアンバランスな関係に、川崎の悩ましい現状を見た気がする。

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