鹿島をACLで首位から転落させた21歳。邦本宜裕の「意地のひと刺し」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by AFP/AFLO

 結果は0-1。失点は後半18分。慶南の右からのクロスボールを、後半守備的MFから左サイドハーフにポジションを変えていた邦本に、裏から合わされたシュートだった。

 ひと言でいえば名GKクォン・スンテの飛び出しミスだ。万歳しながら後ろに逃したボールを邦本に叩き込まれた、まさに「上手の手から水が漏れた」失点だ。邦本も試合後「後半ゴールを決め、試合に勝つことができましたが、個人個人の能力ではやはり鹿島の方が上でした」と述べている。大岩監督が悔しがる気持ちはわかる。

 鹿島がメンバー落ちのスタメンで臨んでも、邦本の目には格上に見えた。言い換えれば、鹿島は能力で上回るにもかかわらず、敗れた。勝てる試合を落としてしまったのだ。

 大岩監督が、失点シーンを悔やみながらも、内容に満足している様子だったのは、メンバー落ち、とりわけCBが急増だったことで、期待より心配が先にきたのではないかと思われるが、それでも実際は鹿島の方が格上だった。

 ここに誤算があったのではないか。先述のとおり、前半は慶南ペースだった。鹿島は専守防衛に徹していた。相手陣内深くに侵入できずにいた。きわめて慎重に戦った。これは鹿島というチームに染みついた伝統というか、癖のように見える。慎重に滑り出し、徐々にペースを上げていく後半勝負のチームだ。大崩れが少ない反面、勝ち味は遅い。

 悪く言えば心配性。格上のチーム、あるいはアウェー戦には効果的かもしれない。後半勝負に持っていき、相手を焦らすことができれば番狂わせの期待は高まる。

 一方、その慎重さは格下に対しては災いする。必要以上に苦戦をする傾向がある。試合開始直後から相手をガンガン攻め立てる鹿島を過去にほとんど見たためしがない。安定している理由でもあるのだが......。

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