リージョの辞任で「バルサ化」は頓挫か。イニエスタ不在の神戸が連敗 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 神戸は守りを固めた浦和に対し、リージョが鍛えてきた戦術練度の高さを示している。後半20分には、右サイドの西が斜めに入れたクロスを、FWウェリントンが頭で落とし、走り込んだFW古橋亨梧が際どいシュートを放った。ひとつのサイドに敵を集めて、もうひとつのサイドに活路を見出す。ゴールにならなかったが、意図は十分に感じられた。

 しかし後半26分にポドルスキを下げると、攻撃は明らかにトーンダウンした。リージョは予定調和的な"部品交換"のような交代を好まなかった。たとえ結果にたどり着かなくとも、ピッチの中で状況をアジャストさせられる選手を送り出している自負があったし、交代で暗転する怖さも承知しているからだ。

 新体制の神戸は、1-0で敗れた。

「悪いサッカーをしたわけではなかった。ファンマ(リージョ)体制から攻撃のベースは変わっていない。守備のところで、奪われたときのプレス、ラインをコンパクトにする、などを(監督就任後の練習では)うるさく言ってきた」(吉田監督)

 この日、神戸の戦いにはリージョの名残りが確かにあった。しかし当然だが、同じではない。リーグ戦では開幕戦のセレッソ大阪戦以来の無得点に終わったが、すでにリージョは去った。

 スペイン人監督の匂いは、徐々に消えていくのだろう。その試みは未完に終わった。

「ミステル(監督)、バルサでプレーしていた頃を思い出したよ!」

 サンフレッチェ広島戦、圧倒的に押し込んだ前半を評し、イニエスタはそう言ったという。皮肉にも、それがリージョにとって神戸で最後のゲームになった。 

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