優っているようで劣っている。グランパス風間監督の理想は超難関だ (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 より攻撃性を示したのは、名古屋のほうだった(はずだ)。躊躇なく縦パスを入れ、ジョーと長谷川アーリアジャスールの前線がしっかりボールを収めて3人目に展開。中だけでなくサイドも駆使して、横浜FMゴールに迫った。

 なかでも際立ったのが、ブラジル人トリオのクオリティだ。今季加入したジョアン・シミッチは卓越したパスワークでリズムを刻むとともに、鋭い対応で米本拓司とともに即時奪回に貢献。PKで先制点を決めたジョーは懐の深いポストワークで味方の攻め上がりをうながし、ガブリエル・シャビエルは右サイドからの鋭いカットインで決定的なシュートを次々に見舞っていく。

「そこに入れるか」と思わず唸ってしまったJ・シミッチのスルーパスからジョーが右に展開し、G・シャビエルがフィニッシュに至った39分の決定機は、まさに3人のよさが示された見事な連係だった。

 そうしたシーンもあり、サイドチェンジ1本で決定機に持ち込む場面あり、高い位置のボール奪取からショートカウンターを繰り出す場面ありと、前半は名古屋のほうが押し込んでいるように見えた。全体がコンパクトさを保ち、全員が相手コートに位置取るなど、名古屋が目指すハーフコートマッチを体現する時間帯もあった。

 だからこそ、風間監督のコメントが、どうにも腑に落ちなかったのだ。

 後半も多くのチャンスを作った一方で、流動性と連動性を増した横浜FMに押し込まれる場面が増えた。シュートの数も前半は10対4だったのに対し、後半は5対8と劣勢に立たされている。印象論だけでなく、数字上でも前半のほうが相手を押し込んでいたはずだった。

 しかし、指揮官の見解は異なる。

「前半は相手のパズルを受け入れて、自分たちがボールを持つことをやめた選手がいた。あまりよくなかったのですが、後半は少し変わって自分たちの力を示してくれた。そういうところです。何かひとつをやればいいというわけではなく、ひとりひとりがしっかりとした自分の判断と自信を持ってやってもらいたい」

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