サンフレッチェが美しい守備で首位浮上。
でも選手は何も感じていない

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

 強固な守備を築くなかで特筆したいのは、チームとしてのカバーリング意識である。実際、この試合でもG大阪にチャンスがなかったわけではない。前半34分には遠藤からのロングパスにアデミウソンが抜け出して、吉野恭平をかわすと好機を迎える。しかし、シュートはGK大迫敬介がセーブ。ただ、吉野が抜かれた際には、懸命に戻った野上結貴が身体を投げ出して対応していた。

 また前半43分には、城福監督も「この試合、最大のピンチだった」と語ったように、途中出場した矢島慎也のボール奪取からファン・ウィジョに中央突破を許した。最終的にアデミウソンのスルーパスを倉田秋にシュートされたが、ここでもGK大迫が好セーブ。ただ、このときもエミル・サロモンソンが倉田にプレッシャーをかけ、佐々木も戻ってセカンドボールに備えていた。

 実は前日練習を終えたあと、3バックの一角を担う野上に聞けば、守備についてこんなことを言っていた。

「ある程度、前がコースを限定してくれるので、僕と(佐々木)翔くんのところでボールを回収できている。それで周りの負担を軽減できているところもあるとは思います。ただ、それ以上に各々が今、何をすればいいかに集中できている。この選手が(前に)出たら、僕はここまで戻るとか、そういう役割が決まりつつあるので、迷いなく守備ができているところが大きいかなと思います」

 試合前日に、わざわざ向こうから「何かありますか」と聞いてくれた心優しきCBは、試合後、今度はこう表現してくれた。

「戻ってカバーし合うところがこのチームの基本ですし、それがないとこのチームでは試合には出られない」

 それは最終ラインに限った話ではない。大黒柱である青山敏弘や昨季主力として活躍した稲垣祥が不在のなか、台頭してきた川辺と松本泰志が担う中盤の貢献度も大きい。

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