アジア王者相手にドロー。ジュビロ磐田に浮上のきっかけは見えたのか (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 後ろに人数を残し、引いて守るだけになってしまったことに、名波監督も「前向きに守備ができなかった」と話していたが、先制後の磐田は、ほとんどの時間で自陣に閉じ込められることになり、鹿島の猛攻をただただ跳ね返すだけになってしまった。

 選手の口から聞かれたのも、試合の進め方についての課題だった。MF山田大記が語る。

「(ボールを奪っても)悪い意味で攻め切ってしまって、すぐにまた守備に回ることになる。(パスをつないで)高い位置まで相手を押し込めれば、(先制後、失点するまでの)30分間守り続けることにはならなかった。まだ遅攻が下手。意識的な遅攻ができない。無理に(攻撃を)やり切らなきゃと思うから、バタバタ感が出てしまう」

 FW大久保嘉人もまた、山田以上に辛辣な言葉をまじえ、同じ課題を口にする。

「先制したのに、案の定やられてしまう。これでは、どこで勝つのかなという感じ。後ろ体重にならず、(相手に攻撃に)来られても、ブロックを組んで慌てずにやるのが大事なのに、(ボールを奪っても)ビビッて蹴っちゃうから、相手に(ボールを)拾われて後ろ体重になってしまう。慌てて(攻撃に)行って(ボールを)取られて、またすぐに(守備に)戻らなければいけなくなる」

 今季J1での5試合で、磐田が初めて奪った先制点は、同時に、磐田に初めてのリードをもたらした得点でもあった。だが、そんな理想的な試合展開も、初勝利にはつながらなかった。大久保の顔にうっすらと浮かぶ自嘲気味の笑みが、心のうちにある落胆を物語る。

「点を取ったなら、どうにかして勝たないと。それもできないとなると、(勝つのは)難しい」

 今季J1は第5節終了時点で未勝利のチームが、磐田の他にも2チームあるおかげで、幸いにして磐田はJ2自動降格圏(17位以下)こそ免れているが、現時点での順位は昨季最終順位と同じ16位。昨季終盤から続く悪い流れを、依然変えられずにいる。

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