アジア王者相手にドロー。ジュビロ磐田に浮上のきっかけは見えたのか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 何しろ、磐田は前節を終えて、2敗2分けと未勝利。加えて、そこまでの対戦相手が、昨季J1で2位のサンフレッチェ広島を除けば、同14位のサガン鳥栖、そしてJ2からの昇格組である松本山雅FCと大分トリニータだったことを踏まえると、かなり厳しいスタートとなっているのである。そんな悪い流れを断ち切るためにも、まずはひとつ、勝利が欲しかったはずだ。

 しかも、試合は、磐田にとって理想的な展開で進んでいた。

 名波監督が「いい守備がいい攻撃につながるという典型的なゲームだった。非常にいい(守備の)ブロックが構築され、危険なシーンは少なかった」と振り返る前半を経て、後半開始から1分も経たないうちに、右サイドの突破から最後はゴール前に走りこんだMF松本昌也が決めて先制。磐田が5試合目で初めて奪った先制点は、初勝利の期待を大きく膨らませてくれるものだった。

 おそらく調子のいいチームなら、これでイケると勢いに乗っただろう。焦る鹿島を後目に、カウンターから追加点を奪うこともできたかもしれない。

 しかし、皮肉なことに、結果が出ていないチームには、虎の子の1点が重荷になってしまった感は否めない。本来、勇気を与えてくれるはずの先制点が、逆に、選手たちの「1点を守らなければいけない」という意識を強めることになった。

 鹿島のDF内田篤人が、「他のチームのことを言うのは、アレだけど」と前置きしたうえで、「パスがどうこうとかではなく、選手の顔とか、雰囲気とかが、勝てていないチームの感じだった」と話していたが、まさにそのとおりだろう。

 加えて言えば、先制点が入った時間がいかにも早過ぎた。0-0でこう着状態のまま試合終盤を迎え、そこで先制していれば、少々守りの意識が強まったところで逃げ切れたかもしれない。だが、後半の45分間をほぼ丸々残した状況で、鹿島を相手に受け身に回ったのでは、超のつく劣勢を強いられても仕方がない。

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