トーレス不在で3戦負けなし。鳥栖の「スペイン色」が抱えるジレンマ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 柏戦は、ベテランFW豊田陽平を中心に選手同士で、そう話し合った。相手のパスを分断し、守備を旋回させることによって、どうにか1-0で勝利を手にした。その流れが、磐田戦も続いた。まずは前線からのハードワークで守備を安定させ、各選手が身体を張った。その結果、トーレスが負傷で途中交代し、退場者を出しながら、ひとり少ない状況でも、1-0で勝利を飾ったのだ。

 「現実的な戦い方を選択している。そこは今の状況を理解し、我慢しながら」(鳥栖・高橋秀人)

 スペイン人監督カレーラスは、信奉してきた4-3-3という攻撃的システムを、あっさりと捨てざるを得なかった。そもそも、サイドアタッカーと言える日本人選手がひとりもいない。センターフォワードだけが余るなど、チーム編成の問題もあるのだ。

「FWは守備で体力を使わず、前でボールを待て」

 カレーラスはトーレスの負担を想定し、そう方針を打ち出していたが、現状を突きつけられた形だろう。

 鳥栖は原点に立ち戻ったことで、戦える形にはなった。

 しかし横浜FM戦も、前後半で20本ものシュートを打ち込まれている。

「90分間、ほとんどハーフコートでの戦いになった。どうすれば相手を崩せるか、というところで。大胆さが足りなかったのか、少し慎重にいきすぎたのか」(横浜FM・天野純)

 ポステコグルー監督のプレーモデルは明確だった。GKがひとり余る形でビルドアップにおける数的有利を作り、サイドバックはインサイドにポジションを取って、中盤を厚くする。そしてインサイドハーフへ積極的にボールをつけ、コンビネーションでサイドを破る。MF三好康児を中心に、攻撃の渦ができていた。結果は得られなかったが、戦いの回路は垣間見えたと言えるだろう。

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