柏は1年でJ1復帰できるか。鬼軍曹ネルシーニョの泥臭い戦術の中身 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

 今季の柏は、2010年にJ2優勝、2011年にJ1優勝を成し遂げたネルシーニョ監督が再就任。その当時からネルシーニョ監督を知る大谷に、あらためて目指しているサッカーを聞けば、こう教えてくれた。

「去年までは、守備ラインを揃えて、入ってきた選手をチーム全体で見ていた。今季もそれがないわけではないですけど、今は『とにかく自分の前にいる選手を掴んで離さない』という守備をしている。攻撃も、去年までは入口のところを大事にして、自分たちが(パスを)つないで(ボールを)握っていくことを大事にしていましたけど、今は基本的に『前へ前へ』という意識が強いですね」

 柏と言えば、テクニックに長けた選手が多く在籍しているように、パスワークによって相手を打開してきたイメージが強い。だが、ネルシーニョ監督の指導によって変わりつつある今季の柏は、粘り強い守備と縦への素早い攻撃を持ち味としている。

 実際、ここまでの戦いを振り返れば、開幕戦はレノファ山口に2−1と逆転勝利し、第2節も第3節も1点を守り切って勝ち点3を手にしている。第4節の京都サンガ戦では、相手にボールを握られながら、試合終了間際にセットプレーから得点を奪って勝ち点3を獲得している。

 言ってしまえば、内容で相手を圧倒しているというよりも、勝利にこだわり、粘り強く戦っている。その姿には、どこか泥臭さすら漂っている。

 そこには、鬼軍曹的な一面も持つネルシーニョ監督による徹底があるのだろう。ただ、ピッチに立っているのはあくまで選手たちである。敗れた岡山戦は、指揮官の意図を忠実に再現しようとしすぎているように見えた。

 柏に勝利した岡山の有馬賢二監督が「本当に強い柏を相手に耐えながらでしたけど、自分たちのいいところを出そうとトライしてくれた結果」と喜びを語ったように、J2において常に柏は強者となる。これからさらに対策を練られれば、異様なモチベーションで相手は向かってくるだろう。だから、キャプテンである大谷はこうも言及した。

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