イニエスタが清水戦で真骨頂。すべてのパスはメッセージ付き (2ページ目)

  • 渡辺達也●文 text by Watanabe Tatsuya photo by KYODO

 後半9分、イニエスタが中央右からダビド・ビジャにスルーパスを通すと、ビジャはダイレクトでシュートを放ったが、GKにセーブされた。このパスの距離が短ければ、ビジャは相手に寄せられてしまっただろう。長すぎればシュートコースが狭くなってしまう。まるで「ダイレクトでシュートを打ってください」と言っているような、絶妙なパスだった。

 さらに、同点にされたあとの後半アディショナルタイム、左サイドでポドルスキに出したパスもそうだった。ポドルスキはダイレクトでクロスを上げたが、わずかにビジャに合わなかった。もしこれが足もとへのパスだったら、相手が寄せてくる。長すぎればディフェンダーとの競走になる。ポドルスキへの「ダイレクトでクロスを上げてください」というメッセージ付きのパスだった。

 清水戦だけではなく、これまでの3試合でも、味方の選手が相手DFラインの裏に走れば、イニエスタはメッセージ付きのパスを出している。

 昨季は、いきなり猛暑の日本にやってきて、思うようなプレーができなかった部分もあっただろう。今季はキャンプからコンディションをしっかり作ってきた。少なくとも暑い夏が来るまでは、イニエスタの1本のパスを見に行くだけでも価値は十分にある。

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