「愚直に前へ」。F・マリノスの
劇的同点弾を生んだ「やり続ける」姿勢

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by KYODO

 24分、大津が右サイドで幅を取る。その瞬間、インサイドを駆け抜けた仲川輝人にパスが出て、仲川はゴールラインぎりぎりで折り返す。これをファーサイドで待っていたマルコス・ジュニオールが流し込んだ。

 同点にした後、横浜FMはチームカラーを強く出し始める。強度の高いプレッシングで、川崎に主導権を握らせない。ボールを奪い返したら、徹底的にサイドを攻め崩す。インサイドハーフは、その渦の中心になっていた。この日は、川崎から期限付き移籍したMF三好康児が欠場を余儀なくされていたが、戦い方は変わっていない。

「(横浜FMは)特殊な配置なので、やりづらさはありましたね。ただ、前から(プレスに)来ている分、はがすと裏をどんどん狙える、とは思っていました」(DF谷口彰悟・川崎)

 横浜FMはリスクをかけながら、勝利を目指した。後半はチャンスも得たが、同時にビルドアップからのミスも多発している。その結果、危ういショートカウンターを何度も浴びた。

 そして、後半43分だった。

 川崎は、中村憲剛が左サイドに展開すると、長谷川竜也がファーへのクロスを流し込み、小林悠が頭で折り返す。3人の交代出場選手が作った好機を、レアンドロ・ダミアンが頭で押し込んだ。土壇場で1-2と勝ち越し、戦力差を見せつけた。

<さすが王者!>

 そんなムードが会場内に流れる。残り時間はほとんどなかった。

 リードした川崎は、これで逃げ切りモードに入っている。当然の流れだろう。ただ、慎重になったというよりは、怯(ひる)みが見えたというのだろうか。"らしくない"クリアで、せっかく奪い返したボールを横浜FMに渡してしまうシーンもあった。

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