イニエスタに見とれる同僚たち。魔法使いのプレーは哲学的で奥深い (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 原壮史●写真 photo by Hara Masashi

 練習で空間、時間を共有する神戸の選手たちは、口々にそう洩らしている。

 中盤の隣でプレーするMF三田啓貴は、天運に恵まれたと言えるだろう。背番号のひとつやふたつ、譲っても損ではなかった。左サイドバックの初瀬亮も、FWの古橋亨梧も、大いに影響を受けるに違いない。また、練習で対峙するディフェンスの選手たちも、違う次元を体験しているはずだ。

 2年目のイニエスタがチームに与える影響とは?

 その答えは、単なるゴール数や勝利では収まらない。チームメイトに絶え間なく与えるカタルシスというのだろうか。1シーズン戦い続けたら、その周囲からは日本代表を狙うような選手も出てくるはずだ。

「アンドレスは自分の力を引き出してくれる。年齢など関係ない。ピッチで最高のパートナーで、自分がうまくなった錯覚を受けるよ」

 かつてカメルーン代表のFWサミュエル・エトーは、当時10代だったイニエスタについて、最大限の敬意を表していた。周りを輝かせる。サッカーという集団スポーツにおいて、最大の能力だ。

「自分が一流だなんて、意識したことはないよ。自分はどこまでいっても自分でしかない。平常心でプレーし、生きているだけさ」

 人並み外れた能力に恵まれたイニエスタだが、謙虚に語っている。

「僕はボールを蹴られるだけで幸せなんだ。たとえ日常で嫌なことがあっても、ピッチでボールを蹴っていれば、だんだんと自分がリセットされていく。いつの間にか、楽しい気分になっているのさ」

 イニエスタはサッカーの化身だ。

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