トーレスの苛立ち。ノーチャンスを打破するために「まず自分に怒れ」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 原壮史●写真 photo by Hara Masashi

 神戸のフアン・マヌエル(ファンマ)・リージョ監督はそう言って、警戒を強めていた。

 だが、この日のトーレスは沈黙して終わった。ブラジル人CBダンクレーとボランチの山口蛍に常に挟まれ、自由がきかない。シュートは力づくで放った1本のみだった。

 鳥栖が選んだ4-4-1-1のフォーメーションは、まさにトーレスシフトと言えるだろう。最前線のトーレスを守備の負担から解放し、カウンターの急先鋒に。トップ下的に運動量豊富な17歳の松岡大起を置いて、そこを守備の起点とした。しかし、神戸に簡単にボールを運ばれてしまい、ゴールチャンスはほとんど作れなかった。終盤は神戸が受け身に立ったことでボールを持つ時間は増えたが、有効なパスはほとんど入っていない。

 孤立したトーレスは、ボールを触ろうとして中盤に落ちている。自らプレーメイクをしようとしたが、選手の距離感が遠すぎたり、近すぎたりで、簡単にコースを読まれた。攻撃は単発に終わった。

「とにかくトーレスを見て、蹴れ!」

 ルイス・カレーラス監督はチームにそう号令を発して、トーレスと心中するつもりだろう。しかし、笛吹けど踊らず。理論が先走り、プレーモデルが確立できていないため、攻撃にリズムが生まれない。

 トーレスは、苦渋の顔を浮かべるしかないのが現状だ。

 たとえば神戸のFWダビド・ビジャは、この日、少なくとも5度の決定機を迎えている。それだけ、チームとしてゲームを作って、チャンスを構築していた。そのうちのひとつを決めるだけでよかった。

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