美学を貫くミシャのコンサドーレ改革。ブレない2年目に大きな可能性

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 結果以上に美しいサッカーを求めるミハイロ・ペトロヴィッチ監督にとっては、最高の試合になったに違いない。すばらしい内容のサッカーを展開し、結果まで手に入れた。しかも、古巣相手のアウェーゲームで、だ。

古巣の浦和レッズを2−0で一蹴したベトロヴィッチ監督古巣の浦和レッズを2−0で一蹴したベトロヴィッチ監督 J1リーグ第2節、北海道コンサドーレ札幌は浦和レッズの本拠地に乗り込み、2−0でホームチームを一蹴。今季初勝利を手に入れた。

「今日のようなゲームを見せてくれたら、死んでもいい」
「マンチェスター・シティに近いサッカーを見せられた」

 冗談とも本気ともつかない表情で、指揮官は試合を振り返っている。それほどまでにこの日の札幌は、とくに前半にすばらしいサッカーを展開した。古巣相手の快勝に、ミシャの愛称で親しまれる東欧出身の名将は、高揚感を隠せないでいるようだった。

 試合はいきなり、ビッグプレーで幕を開けた。開始2分、チャナティップ→アンデルソン・ロペス→菅大輝と素早くパスが回ると、再びボールを受けたA・ロペスがエリア内に走りこむ鈴木武蔵に浮き球パスを供給。これを受けた鈴木は冷静にネットを揺らし、札幌が先制に成功した。

 まさに電光石火とも言える一撃は、パスのスピードと精度がともない、複数人がオートマティックに連動する完璧な崩しがもたらしたもの。「練習でやっていた」と鈴木が振り返ったように、けっして偶発的には生み出すことのできない狙いどおりの形だった。

 昨季、ペトロヴィッチ監督が就任した札幌は、ポゼッションを重視する攻撃スタイルを展開し、クラブ史上最高の4位という望外の結果を手に入れた。前年の堅守速攻型から180度舵を切ったチームは、当然その過程に多くの困難がつきまとったはずだ。ボールをつなごうにも精度がともなわず、ミスから失点を重ねる試合も少なくなくなかった。川崎フロンターレに7失点を喫した試合は、その最たる例だろう。

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