ポステコグルー流が実を結ぶ。F・マリノスは本当に降格候補なのか?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Etsuo Hara/Getty Images

 先ごろ行なわれた、アジアカップでのことだ。UAEのアブダビで知り合ったオーストラリア人記者は、不満げだった。

「パス、パス、パス。みんなパスをつなぐことばかりを考えて、サッカーは点を取り合う競技だということを忘れている」

 かつてはスピードやパワーといった、フィジカル能力の高さが武器だったオーストラリアのサッカーも、今ではすっかり様変わりした。クラブチームを見ても、世代別も含めた代表チームを見ても、その多くがショートパスを主体としたポゼッションサッカーを志向。国全体として、目指すサッカーが明らかに変わってきている。

 しかし、そのアジアカップでは、オーストラリアは準々決勝敗退。スタイルの変化が結果に対しての即効性をともなうわけではない現状を、誰もが好意的に受け止めてくれるとは限らない。

 前述の記者も否定派のひとりだった。

 現在、横浜F・マリノスを率いるオーストラリア人監督、アンジェ・ポステコグルーも、そんなサッカーを好むひとりですね――。そう水を向けると、彼は顔をしかめて、「まったくそのとおりだ」と、大きくうなずいていたのを思い出す。

 ポステコグルー監督が就任した昨季、横浜FMは、徹底したポゼッションサッカーに挑み始めた。

 ピッチ上の選手たちが前後左右に目まぐるしくポジションを入れ替えながら、ショートパス主体でボールを動かし、相手ゴールへと迫る。極端なまでにポゼッションに偏ったサッカーは、好奇の視線を集めはしたが、結果にはつながらず、残留争いを強いられることになった。好奇の視線とはすなわち、無謀な挑戦に対する冷ややかな目と言い換えてもいいだろう。

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