久保建英の肉体と精神は1年で大きく成長。バルサ育ちの真価発揮へ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 前半4分だった。久保は左サイドでボールを受けると、昨シーズンMVPの家長昭博のプレッシャーを巧妙なボールキープで回避。今までだったら潰されていたところで、ボールを失わない。ゴールラインに沿って高いスキルを使って侵入し、マギーニョもかわしたところで、CKを獲得した。

「建英は変わりましたね。もともとうまい選手ですけど、今は安心して(ボールを)預けられる。あいつがギャップで受けて、東京の攻撃を作るというのが、形のひとつになると思います」

 FC東京のMF橋本拳人は言う。

 この日、攻撃の渦を作っていたのは、17歳の久保だった。前半41分、右FKを久保は年長選手を差し置いて蹴って、ポストを直撃する左足シュートを放っている。それは技術の高さの証明だったが、そのFKを得たのも、彼のキープとパスが起点だった。独特のタイミングで相手の間合いを外し、軽やかにボールを弾く。身体を寄せられると、その動きを利用してくるりとターン。独壇場だった。

 そして特筆すべきは、守備力の向上にあるだろう。

 川崎戦で左利きの久保は右サイドを担当したが、川崎の左からの攻撃を分断。相手の侵入とパスコースを同時に切って、球際でも互角以上の勝負を見せた。パスカットからカウンターを狙っている。守備面の向上は著しく、日本代表の車屋紳太郎とマッチアップしても、少しも負けていない。

 昨シーズンまでの久保は、「守備の安定で攻撃を旋回させる」というFC東京の戦術に適応できていなかっただけに、見違えるような姿だった。

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