2019.02.25

同じシステムも持ち味は大違い。
予測力の湘南が支配力の札幌を下す

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Kyodo News

 センターフォワードの山﨑凌吾を中心に前線で時間を作ると、中盤より低いポジションの選手たちは次々に前の選手を追い越し、より高い位置でパスコースを作ろうとする。後半には大卒ルーキーの大橋祐紀が投入され、この快速アタッカーのスピードと積極性により、フレッシュな風はさらに勢いを増した。

 最後に違いを作ったのが右CBの山根視来だったところも、近年の湘南らしい。後半37分、元アタッカーの背番号13は「(前方の岡本)拓也を見たらキツそうだったので、僕が行くべきかなと」と駆け上がり、山﨑との連携で抜け出すと、深い位置で相手をかわして折り返す。一度はGKク・ソンユンが抑えたかに見えたボールを、武富が押し込んで先制点を奪った。

 殊勲の山根が「よかったのはそこだけ」と謙遜したように、3バックのひとりが攻撃に貢献した点だけでいえば、危険なクロスを何度も上げた札幌の福森に劣るかもしれない。しかし、結果につなげたのは山根。独特な手法の3バック同士の対戦が、こうして決着をみるのも興味深い。

 その直後にジェイがフリーのボレーを決めていたら、結果は変わっていたかもしれない。シュート技術が高い36歳の元イングランド代表 FWは珍しくミートできず、その後には鈴木武蔵が頭でボールを捉えるも、ボールはGKの正面に飛んだ。

 終盤には湘南の山﨑がこの日最大のチャンスを迎えたが、GKとの1対1でシュートを打たずに防がれてしまう。だが、今季から11番をまとう大型ストライカーは、その2分後にボックス内で粘って武富の2点目をアシストし、ミスを帳消しにした。

「湘南に戻ってきて、勝利に貢献したいと思っていたので、今はホッとしています。湘南はもともと、出足が早いので、そこに予測する力が加われば、さらにいいサッカーができると思います」

 2013年から2シーズンを湘南で過ごし、このオフに浦和レッズから帰還した武富は、見事な働きでチームに最高のスタートをもたらした。しぶとくゴールを決めたうえ、両チームを通じて最長タイとなる走行距離を記録するなど、戻ってきたチームのスタイルを体現した。同じく12キロ超を走った松田と齊藤の小兵セントラルMFコンビも、中盤のバトルを制すには体格だけが重要ではないことを示し、激しいプレスや執拗な守備で札幌の厄介な3トップを苦しめた。

 この日のJ1の試合で、ホームで勝利を収めたのは湘南のみ。選手たちに力を与えたサポーターの力も、難しい開幕戦の勝因のひとつだったことをつけ加えておく。

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