「主役」ヴィッセル神戸を食ったセレッソ大阪、ロティーナ采配の妙 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 牛島寿人●撮影 photo by Ushijima Hisato

 神戸は、ビジャを左、ポドルスキを右に開かせたうえで、イニエスタを"偽のCF"として中央でプレーさせることにより、相手DFラインにギャップを作り出そうと試みたが、セレッソはその企みにハマることがなかった。「神戸はすばらしいコンビネーションでボールを握っていた」(ロティーナ監督)のは確かだが、セレッソはほとんど決定機を与えていない。

 後半に入ると、セレッソが「落ち着いてボールを回すことができ、相手の穴を突いて攻撃できた」(ロティーナ監督)ことで、試合は拮抗した互角の展開に。

「1点を先に取ったほうが勝つ確率が高くなるゲームだった」

 そう語るロティーナ監督は、互いに攻め合う両チームが徐々に間延びしてきたのを見逃さず、MF水沼宏太に代え、FW都倉賢(コンサドーレ札幌→)を1トップに投入。1トップのFW柿谷曜一朗を1列下げ、FW清武弘嗣とともに、2列目に並べた。

 都倉が前線中央にポジションを取り、「(神戸の)CBを引っ張ることで、4バックと中盤の間にギャップが生まれる。そこで(テクニックとスピードに優れた)曜一朗とキヨ(清武)が前を向いてボールを持つことができる」(都倉)。自分たちの強みを生かした、的確な勝負手だった。

 結果的に、後半32分のDF山下達也の決勝ゴールは、CKから生まれたものだった。ロティーナ監督も「幸運にも我々がゴールすることができ、勝つことができた」と語る。

 だが、守備に追われた前半から一転、明らかに異なる流れを作り出すなかで生まれたという意味では、自らの力で手繰り寄せたゴールと言っていいだろう。

 うまく攻撃ができなくとも、決してバランスを崩すことなく、相手の攻撃を封じ切り、攻撃に修正を加えて試合の流れを変えながら、最後は選手交代を生かして勝負を決める。

 狡猾(こうかつ)というか、巧妙というか。とにもかくにも、そんな賢い試合運びこそが、この勝利を快勝と表現したくなる理由である。

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