36歳、弱気な中盤の職人。今野泰幸はガンバの躍進に欠かせない (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • photo by AFLO

 メンタルが落ち込んでいる要因は、どうやら疲労にあるようだった。

「オフにはしっかり休んで、1次キャンプも楽しくやっていたんですけど、2次キャンプに入って練習試合が多くて、移動もあって、疲れが溜まってきてキツくなってきた。それが原因なのか、コンディションが全然上がらなくて......。これまでキャンプからスタメン組にいることが多かったから、こうした状況は初めて。それで戸惑いもあるのかもしれません」

 振り返れば昨季、シーズンの半分を欠場することになる足首のケガを受傷したのも、沖縄キャンプでのことだった。ケガは思いのほか重傷で、5月に手術を余儀なくされてワールドカップを棒に振り、復帰は後半戦まで待たなければならなかった。

 今回のキャンプでも川崎戦で再び足首を痛めてしまい、「(ケガの状態は)そんなに重くはないですけど、このグラウンドとは相性が悪い」と苦笑するしかなかった。

 昨シーズンは負傷から復帰すると、獅子奮迅の働きで中盤を締め、苦しむチームを蘇らせた。今野が戦列に戻った9月1日の川崎戦で4試合ぶりの勝利を飾ったチームは、そこから9連勝を飾って一気に浮上する。

 その事実に、今野もあらためて自信を深めていた。

「残留争いという難しいシチュエーションのなかで、メンタルの部分を乗り越えて自分のプレーで勝利に貢献できたので、ひと皮むけた感覚があったんです」

 だから今野は、自身に言い聞かせるようにして言うのだ。

「去年もケガを乗り越えられたんだから、今のこういう苦しい状況も乗り越えられれば、また強くなれると思う。それは自分次第なので、これからですね。もちろん試合に出たいので、コンディションをしっかり上げてメンバー争いに加わっていきたい」

 復帰戦となった昨シーズンの川崎戦の前、今野はやはり今と同じようにややこわばった表情で、「わからない」と繰り返していたという。ところが、連覇を狙う川崎を2−0と下し、ミックスゾーンに姿を現した今野は、前日までの不安そうな表情が嘘のように、「俺、持ってる」と誇らしげに言ったという。

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