浦和レッズ、練習試合わずか1回。「オズの魔法使い」の狙いとは? (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 1年で70試合――。それは言うまでもなく、リーグ戦に加え、ルヴァンカップ、天皇杯、そしてアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)でも決勝まで戦うことを想定している。シーズンが始まれば過密日程となり、戦術トレーニングに十分な時間を避けない。だから今、実戦よりもトレーニングを重視するというわけだ。

 しかし、ここには、もうひとつの狙いがあった。

「飢えですよ、試合への飢え。早く試合がしたい――。選手たちにそうした気持ちが芽生えれば、それがモチベーションにつながりますから」

 実際、「試合をしたくてウズウズしている」という選手がいるから、すでに魔法にかけられているのだろう。

 それだけではない。

 ミーティングでは演説のように言葉に強弱をつけて語りかけ、昨年の天皇杯決勝の前日には大勢のサポーターを招き入れ、すばらしい雰囲気を作り上げた。あの手、この手で選手のマインドを巧みにコントロールする――。それが、「オズの魔法使い」と言われるゆえんだ。

 一方、ピッチ内では極めて論理的だ。

 昨シーズン終盤に最適解として見出した3ボランチの3-5-2を継続しながら、リハビリ中の武藤雄樹、青木拓矢(現在は全体練習に復帰)に代わって杉本やエヴェルトンといった新加入選手を試している。練習試合では敵陣でボールを失うと、ベンチから「プレス! プレス! プレス!」という激しい声が飛び、ハイプレスが敢行された。左ウイングバックに入る宇賀神友弥が語る。

「ハメに行った時のパワーだったり、それで(ボールを)取り切るところは昨シーズンもやっていましたけど、今年はそこによりフォーカスしてやっています。その強度を高めることがテーマなのは確かです」

 それをやり切る体力をつけるためにも、2次キャンプに入ってもなお、ホテル近くの砂浜でフィジカルトレーニングを行なっている。こうした計算づくの身体作りは、フィジカルコーチ出身のオリヴェイラ監督ならではだろう。

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