本音をぶつけろ。湘南ベルマーレの選手は議論して成長した (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 そういう思いを抱きつつ、2017年を過ごしていたんですけど、J2を戦っていたこともあって、チームとして壁にぶつかることなくJ1に昇格できてしまった。それで迎えた昨年、J1は決して簡単に勝てるリーグではないので、このままではいけない、何かを変えなければと、ずっと思っていたんです」

 秋元の言葉を借りれば、「仲良し集団」なだけではJ1を勝ち抜くことはできない。ましてやプロである以上、互いに遠慮していれば、チームとしてはおろか、個々が成長することもできない。

 失点するたびに、負けるたびに、責任の所在を「自分」に向けるだけのチームメイトに対して、秋元はずっとわだかまりがあった。腹を割って話していないのではないか、と――。だから、その心の内をさらけ出させるきっかけであり、タイミングを探していたのだ。

 それが、たまたま梅崎の行動だった、というだけだった。秋元が続ける。

「ウメさん(梅崎)の苛立ちの矛先が自分自身に向いているということも、わかってはいたんです。おそらくですけど、コンディションが上がりつつあったなかで、自分が理想としているプレーと実際のプレーとのギャップに苛立っていたんだろうなと。でも、それ以上にチーム自体が不甲斐なかったので、ここをきっかけにするしかないなって思ったんです」

 さらに、秋元が怒りをぶつける相手は、梅崎でなければならなかった。

「自分よりも年下の選手に対して厳しい発言をしてしまえば、きっと、萎縮してしまうだけですよね。それでは議論にならないですし、意味がない。自分よりも年上であるウメさんであれば、もともと熱い性格の人なので、効果的なのではと思ったんです。

 実際、シュン(菊地俊介)や(高山)薫(現・大分トリニータ)に同じことをしていたら、ああいう言い合いにはなっていなかったはず。だから、ウメさんがボトルを叩きつけたとき、『ここだ!』って思ったんです」

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