10年在籍のFC東京から名古屋へ。米本拓司の苦悩「最後のチャンス」 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • 小早川 渉●撮影 photo by Kobayakawa Wataru

―― 昨年夏にも、オファーをくれたクラブがあったそうですが、その時は移籍する気はなかったんですか?

米本 正直、僕は行きたかったですよ。こんなチャンス、もうないかもしれないと思ったので。だから、(長谷川健太)監督に直接、言いに行ったんですけど、「いや、お前は必要な選手だから、絶対に残ってほしい」と言われたんですよ。

―― 引き止められたんですね。その言葉が胸に響いた?

米本 いや、その時は「そんなことを言っても、使ってくれないじゃないか。俺だって試合に出たいんだ」って思いました。でも、そのころは東京もいい順位にいて、自分がチームを壊すわけにはいかなかった。

 それで、東京に残ると決めた時、監督に「あの時はお騒がせしてすいませんでした。気持ちを切り替えて、優勝するために全力を尽くします」って言いに行ったんです。そうしたら、「そうか、本当にありがとう」って。そう言った手前、もうワガママができなくなったというか......。

―― 自分で退路を断ったわけですね。少なくとも半年間は東京のために、と。

米本 3回大ケガをして、このチームには本当にお世話になったし、残ると決めた以上は本当にタイトルを獲りたかった。だから、切り替えました。試合に出てない時も、モリゲくん(森重真人)と一緒に筋トレをしたり、午後練がない日に2部練をしたり。

 同じように出番がなかったマコや山田(将之/現・FC町田ゼルビア)とかにも、「チャンスは絶対に転がってくる。そのチャンスを掴むために、今がんばるんだ」って話して、一緒に練習した。だからこそ、シーズンが終わった時、「自分が東京でやるべきことは、すべてやり終えたんじゃないかな」って思えたんですよね。

―― そんな時に、名古屋が声をかけてくれたと。

米本 やっぱり、プロサッカー選手は試合に出てナンボだし、いくらチームのために行動したと言っても、自分が試合に出なければ意味がない。今、自分を選手として評価してくれているのはどっちなのかと考えた時、名古屋だったというか。

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