現役21年目の我那覇和樹。変わらぬ川崎への想い「感謝しかない」 (3ページ目)

  • 木村元彦●文&写真 text&photo by Kimura Yukihiko

 サッカーが好きで仕方がない。そんな気持ちが表情や言葉から伝わってくる。我那覇のCASの聴聞会でのスピーチを思い出す。

I devoted my whole life to football and I have never done anything to betray it.

(私はサッカーに人生を捧げて来ました。サッカーを裏切るようなことはしていません)

I also wish that no other athletes should ever go through the experience that I had.

(私と同じような思いをする選手があってはならないと思います)

 我那覇は済んだこととして一切、過去には触れない。しかし、と筆者はいつもあの冤罪事件がなければと思ってしまう。2007年元旦の沖縄の地元紙沖縄タイムスの特集の中で彼は「欧州でプレーしたい」と語っていた。事件がなければ日本代表定着、沖縄出身選手として初のW杯出場。ヨーロッパのクラブへの移籍という道が開けていたであろう。だが、「たられば」は絶対に口にしない。

「それは僕に力がなかったからですよ。僕に力があればあのまま代表に残れたんです。それを言い訳にはしたくありません」

 CASへ提訴に向かうため、東京の弁護士との打ち合わせに連日時間を取られていた頃は、練習に向かう車の中でひとり泣いていたというのに、誰かを責めるということは一切口にしないのだ。

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