ジュビロ名波監督が明かす、
川崎戦のあとの「尋常じゃない1週間」

  • 原田大輔●取材・構成 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 結局、相手もそこまで(裏を)狙ってこなかった。他には(2列目の)林陵平の動き出しに気を配っていたけど、その動きも決して多くなかった」

――小川選手がPKを決めた先制点につながる、その前の攻撃も絶妙でした。

「PKを奪うまでの形は、練習どおりのすばらしい攻撃だったと思う。あの場面、もし川又だったら、(山田大記からの)スルーパスにもっと早く追いついていただろうから、GKに倒されることはなかったと思う。また、別のFWだったら、スルーパスに追いつけず、GKにキャッチされていたんじゃないかな。そういう意味では、まさに航基のスピードがちょうどよかったんだよね」

――そして後半35分、田口泰士選手がFKを決めて2点目を奪いました。J1残留を確信したのは、その辺りでしょうか。

「そうですね。ただ、順位的に見れば、J2で6位のヴェルディはJ1だと24位でしょ。16位と24位では、その分の力の差があるわけだから。最後は我々のラインも少し下がってしまって、相手が押し込み始めたけど、それでも決定的な場面は作らせなかった。そこは、J1でやってきた我々と、J2でやってきたヴェルディとの差が出たかな、と思う部分はあります。

 何にしても、選手たちは90分間、落ち着いていて、よくやってくれた。自分も退路を断っていたから、ラストゲームだと思って、気持ちはグッと入っていました」

――試合が終わった瞬間は、どんなことを思ったのでしょうか。

「何の感情もなかった。安堵感はあったけど、みんなに申し訳ない、という気持ちだけだった。でも(試合後)、そこからの90分間は、自分の人生おいても"怒涛"というか、本当に濃い時間になりました」

(つづく)

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