湘南の梅崎司は若手に訴えた。
「恐れなくていい。勇気を持とう」

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi 小倉直樹●撮影 photo by Ogura Naoki

──チームを束ねる曺貴裁(チョウ・キジェ)監督との関係について聞かせてください。あの33節浦和戦後の監督会見で梅崎選手について訊かれ、「あきらめないこと。それに尽きる。10代の頃に初めて見て、負けん気の強い面白い選手というイメージだったが、浦和でどこか表情が暗くなっていた。それが湘南でここまでのパフォーマンスをするようになった。しかも本来の攻撃的な選手として」と言っていました。監督自身もちょっと言葉を詰まらせながら。

「あきらめない。本当にその言葉に尽きますね。悲しいこと、悔しいこと、厳しく苦しい瞬間を、何度も経験してきました。それが長期にわたることもありました。けど、このままで終わりたくない。あきらめたくない。陽の目をもう一度浴びたい。そんな思いしかなかったんです。自分の根底には常にそれがあります。今季も自分に納得できないことは何度もありました。だからこそ考えて、もう一度トライする。僕のベースはそれなんですよね。負けたくないと思い続けて、ダメだったら思考して、自分なりの答えを見つけてそれに挑む。今季はあらためて、そう思いました」

──その「あきらめない」ことを体現して、周りの仲間、ファンを含む多くの人を勇気づけていると思います。

「ちょっと偉そうに聞こえるかもしれないですけど、やっぱり僕は見られている側として、そういったことを表現していかないとダメだと本気で思っています。お客さんに伝える義務がある、というか。苦しい日々でも、自分で光を探して、もう一度その光を浴びようとする。僕はそういうことを繰り返してきたんです。僕らは幸いにも、ピッチでそれを見せることができる。そういった姿を見せるのがプロフェッショナルの役割でもあると思います。自分がすごい選手だとはまったく思わないですけど、そういったところは今季、少し見せられたのかもしれません」

──曺監督に言われたアドバイスや言葉で、とくに印象に残っているものがあれば、教えてください。

「たくさんありすぎるんですけど、自分なりにまとめると、僕の若い頃、一番アグレッシブだった頃と常に比較してくれること。そこに目線を向けるようにしてくれました。そんな監督には会ったことがないです。あの頃とは身体も考え方も違うし、なによりフィジカルが違う。それでも自分のいいところを信じる。その重要さをあらためて感じました。そうでなければ、レッズ戦のゴールも、名古屋戦のゴールも生まれなかったはずです」

──では最後に、ちょっと気が早いかもしれないですが、今後の目標を教えてください。

「2018年は、自分がベルマーレに呼ばれた価値を、最後に見せることができたような気がしています。とくに最後の2試合では目に見える結果で貢献できました。それは自分が強い意志を持っていたからだと感じています。ただそれが十分ではない時もあって、それゆえに最後まで残留争いをしてしまったので、今後はその気持ちや姿勢を完全に自分のものにしたいですね」

  プロフィール

梅崎司 Umesaki Tsukasa

1987年2月23日 長崎県生まれ

大分トリニータU-18から2005年に大分トリニータのトップに昇格してJリーグデビュー。その後07年にフランスのグルノーブルへ移籍。08年に浦和レッズへ加入。ケガに苦しむシーズンもあったが、16年のルヴァンカップなど、タイトル獲得に貢献した。18年に湘南ベルマーレへ移籍。チームの中心としてルヴァンカップ優勝、J1残留を果たした。

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