サンフレッチェひと筋22年。引退した森﨑和幸の歩みはクラブの歴史だ (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

―― その札幌戦はどのような思いでピッチに立ちましたか?

森﨑 とにかく勝ちたいという思いだけでした。それしか考えていなかったです。たしかに、時間が過ぎれば過ぎるほど、自分のキャリアが終わっていくというか、キックオフしたときからカウントダウンが始まっていることはわかっていました。だから、ハーフタイムを迎えたときには「泣いても笑ってもあと45分」だなと思いましたよね。

 そのうえで、自分が90分間出場できるとは思っていなかったので、とにかくやれるところまでやり切ろう、すべてを出し切ろうと思っていました。その次には、前半を終えて1-2だったので、まずは同点に追いつくことを考えました。

―― 結果的に2-2の同点に追いつき、自身は82分までプレーしました。

森﨑 そこまでプレーできるとは正直、想像していなかったですね。実は試合中、何度も、監督やベンチから「大丈夫か?」と聞かれていたんです(笑)。自分としても、前半で力を出し切ったところもあって、体力的には厳しいところもありました。

 ただ、後半に入り、ずっとうちがボールを支配していましたし、攻めていたので、この展開ならば『まだ何とかなるな』と思ったんです。もし、自分がピッチにいることで、失点する可能性だったり、劣勢になる可能性があったとしたら、迷いなく交代を選択していたと思います。

―― 最後、ピッチを出るときはどのような心境でしたか?

森﨑 交代するとき、GKのタクト(林卓人)も含めて、みんなが駆け寄ってきてハイタッチしてくれたのはうれしかったですね。札幌のサポーターにはちょっと申し訳なかったですけど、最後くらいは自分の気持ちを優先してもいいかなと思い、時間をもらってしまいました(笑)。

―― 2-2で試合を終えて、チームは2位を確保。来季のAFCチャンピオンズリーグ出場権を獲得しました。

森﨑 最低限の仕事はできたかなと思っています。ただ、2位になれたのは、1年間がんばってきた選手がいたからこそ。僕と交代してピッチに入ったゴロー(稲垣祥)はその中心としてプレーしてきたように、彼らが積み重ねてきたから、勝ち獲れた2位だったと思います。そこに最後の最後で、少しだけ自分も加わることができたのかなと。

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